「Ethereal」は,数え切れないほど多くの管理者がはるか昔からパケット取得とプロトコル分析に使ってきたツールである。この大人気のオープン・ソース・ツールが新しい名前「Wireshark」を得て,新スポンサーと組むことになった。

 Wiresharkは,元々Etherealのソース・コード・ツリーから分岐したツールだ。ソース・コードを分岐させるとは,ソース・コード・ツリーをコピーして,開発を継続するために新しい枝を作る作業を意味する。分岐の際には,一般的に開発者が変わる。ところがWiresharkのFAQには「Wiresharkのソース・コード・ツリーは,現在もEtherealの中心的な全開発者がプロジェクトを担当している点が特徴」との指摘がある。今後もWiresharkは無償公開し,GNU General Public License(GPL)を適用する。

 Etherealの作者でチーフ開発者のGerald Combs氏は,プロジェクトの変更を米国時間6月7日に発表した。Combs氏によると,ユーザーの多いWindows環境向けパケット取得/フィルタリング・エンジン「WinPcap」のメーカーである米CACE Technologiesに転職したそうだ。WiresharkやEthereal,「Snort」,「nmap」を含む膨大なWindowsベースのネットワーク関連ツールが,下位層のネットワーク処理でWinPcapに大きく依存している。Combs氏はCACE Technologiesで,WinPcapのパケット取得ライブラリを作ったLoris Degioanni氏およびGianluca Varenni氏と連携して作業する予定だ。

 Combs氏は「これまで勤めていた米Network Integration Services(NIS)がEtherealという名称と関連ロゴの商標を持っているため,今後Etherealというツール名は使えない」と説明した。Combs氏は「Etherealの商標についてNISと合意できなかった」ため,ツールの名称変更を選んだ。さらにCombs氏は,「合意には至らなかったが,今もNISのすべての人たちから高く評価されている」とした。

 「Wiresharkに移るにあたり,Etherealの中核開発チームに借りを作った。チームの支援と,Etherealのユーザー・コミュニティからの貢献のおかげで,世界トップクラスのオープン・ソース・ネットワーク・プロトコル分析ツールの開発を,支障なく続けられる状態となった。たくさんの素晴らしい新機能をWiresharkで実現するつもりだ。CACEに入社できて本当に嬉しい。Loris氏とGianluca氏はEtherealコミュニティで多くの尊敬を集めており,そうした人物と一緒に開発できることが素晴らしい。そのうえ,われわれ夫婦が娘を育てるのに(カリフォルニア州)デービスは最高の土地である,というおまけまで付いた」(Combs氏)

 Wiresharkの開発資金はCACE Technologiesが援助する。プロジェクトは手始めにWiresharkという名称をCombs氏の商標にして,将来同じような事態になることを防ぐ。新しいドメイン名「wireshark.org」は登録済みで,WiresharkのWebサイト,メーリング・リスト,バグ追跡システム,ソース・コード・リポジトリSubversion(SVN),自動コード・コンパイラ/テスターBuildbot,Wiki,その他関連リソースで利用する。Wireshark 0.99.1の評価版は,既に新しいWebサイトからダウンロードできる。

 なおEtherealプロジェクトの今後に関する情報は,本記事の執筆時点で得られていない。