米Intelは,量産可能な3次元(3D)構造のトライゲート・トランジスタを開発した。Intel社が米国時間6月12日に明らかにしたもの。新開発のトライゲート・トランジスタは高性能かつ省電力であり,Intel社では「45nm以降の微細なプロセス・ルールで製造される将来のマイクロプロセサにとって,基本的な素子となる」と見込む。

 トランジスタは微細な構造を持つシリコン製のスイッチで,あらゆる半導体LSIの基本的な部品に相当する。従来のプレーナ型トランジスタは,1950年代に初めてトランジスタが発明されて以来,同じ平らな構造をベースとしている。

 ただしこの構造のままでは,半導体製造技術の微細化が進んでナノ・スケールになると,トランジスタの厚みは原子数個のレベルにまで薄くなり,漏れ電流が増大し,正常に動作させるには多くの電力が必要になる。このため発熱量が許容できないレベルに達してしまう。

 Intel社のトライゲート・トランジスタでは,平面上に垂直な壁を持つ“台地”を設けて3D構造を作った。こうすることで,トランジスタの上部に加え,台地の壁の部分にも電気信号を通すことが可能になる。その結果,基板の面積を広げることなく,より多くの電流を流せる。「漏れ電流が相当小さく,現在のプレーナ型トランジスタより消費電力がはるかに少ないことから,当社の省電力化に向けた取り組みで重要な役割を担うだろう」(Intel社)。

 同社によると,「トライゲート・トランジスタは,65nmプロセスで製造した現行トランジスタに比べて駆動電流(スイッチング速度)が45%増え,オフ時の電流が50分の1に減り,スイッチング切り替え時の消費電力が35%減る」という。

 「当社はトライゲート構造のトランジスタ,高誘電率(high-k)ゲート絶縁膜,ストレインド・シリコンという3つの主要技術を組み合わせることに成功し,トランジスタの特性で再び記録を作った。こうした結果から,次の10年間もムーアの法則を維持できると確信している」(Intel社副社長兼コンポーネント研究ディレクタのMike Mayberry氏)。

 なおIntel社は,6月13~17日にハワイのホノルルで開催される2006 Symposium on VLSI Technologyにおいて,同トランジスタに関する発表を行う。

[発表資料へ]