著者は5月に開催されたWindows Hardware Engineering Conference(WinHEC)2006で,混乱を招くような米Microsoftとの会議に出席した。Microsoftの開発部門責任者たちとの会談で,Windows Vistaに搭載するアプリケーション・プログラミング・ライブラリ「WinFX」が,そのまま「.NET Framework」の次版になると知った。そこで著者は,なぜ名称が変わるのかについて質問した。将来.NETとWinFXは統合されるのだろうか。

 Microsoftは6月第2週,.NETとWinFXを取り巻く状況を明確化しようと決めた。WinFXという名称を廃止し,「.NET Framework 3.0」と呼ぶことにしたのだ。Microsoft副社長のS.“Soma”Somasegar氏は先ごろブログ記事で,「.NET FrameworkはずっとWinFXの中核であり続けたが,WinFXというブランドはそうした状態を示していなかった」と書いた。「われわれは,名称をWinFXから.NET Framework 3.0に変更することにした。.NET Framework 3.0(という名前)は,開発者向けフレームワークの次版というこの技術の本質を正確かつ適切に表現している。変更は名称だけであり,Windows Vistaに搭載する技術の内容には影響しない」(Somasegar氏)

 これまで.NETは,2000年に「Next Generation Web Services」として初めて登場して以来,ずっとブランド論争の中心にあった。Microsoftは.NETに改名した後,.NET技術と.NETブランドの両方を全製品に付けようとやや熱中し過ぎた。例えば「Windows Server 2003」は,元々「Windows .NET Server」と呼ばれていた。「Windows XP」は「Windows .NET」になる可能性があった。Microsoftは無駄な努力を数年間続けが,最終的に.NETという名前を前面に出すのを控えた。.NETブランドには「WinFXとは共存できない」という懸念もあった。しかし,事実は逆だった。

 .NET Frameworkはプログラミング言語に依存しない開発者向けフレームワークであり,Windows用アプリケーションやサービスの開発に利用できる。組み合わせる開発環境は「Visual Studio」を使うことが一般的だが,ほかの環境も使える。C#やVisual Basic,Visual C++といった最近のプログラミング言語は,.NET Frameworkの論理/オブジェクト指向クラス・ライブラリに対応していて,.NET Framework実行エンジン上で実行可能なコードを作れる。.NET Frameworkの旧版は様々なバージョンのWindowsで利用できるが,初めて登場したときは「Windows Server 2003」に搭載されていた。

 Windows Vistaは,中核コンポーネントとして.NET Frameworkを採用する初のクライアント向けWindowsとなる。旧版と同じく.NET Framework 3.0は,Windows XPやWindows 2003でも使える。