米Microsoftは5月第3週に,次期メディア・プレーヤ「Windows Media Player(WMP)11」の公開ベータ版をリリースする。WMP 11は,米Viacomのケーブル・ネットワーク事業部門MTV Networksが手がけるオンライン音楽サービス「URGE」と連携可能である。MicrosoftとMTV NetworksはWMP 11とURGEを組み合わせることで,オンライン音楽販売市場を支配している米Apple Computerの「iTunes Music Store」に対抗しようとしている。問題点があるとすれば,WMP 11とURGEは,巨大な市場シェアを持つAppleの「iPod」と互換性がないことであろう。

 WMP 11のベータ版を目にすると驚くかもしれない。iTunesよりも優れた,簡潔でありながら素晴らしい見た目のユーザー・インターフェース(UI)を採用している。メディア・ライブラリは,パソコンにコピーした音楽CDアルバムのジャケット画像で表示する。新しい再生制御機能とすっきりとした黒い操作画面を備え,これまでのWMPに比べ上品で,プロ向けという雰囲気を醸し出す。WMP 11のグラフィックスときびきびした動作に比べると,iTunesの画面は行とテキストが延々と並んでいるだけの,つまらないデータベースや表計算アプリケーションによく似ている。こうした面で,WMP 11はiTunesよりも優れているといえるだろう。

 従来のWMPと同様,WMP 11は「MSN Music」や「Napster」など複数のオンライン音楽サービスに対応する。ところがMicrosoftは,派手に宣伝したわりにかつてのNapsterをまねただけのURGEと連携するようWMP 11設計した(結果的には,WMP 11のリリースを遅らせた)。URGEは200万曲以上の楽曲を用意しており,アルバム単位ではなく1曲当たり99セントで個別に購入できる。月額制と年額制の購入メニューも設定する。ほかのオンライン音楽サービスになくて,URGEだけにある新しい部分は「MTVがかかわっている」ことだ。MTVと組むのは,「MTVには,若者をiTunesから奪うだけの人気がある」と考えたからだろう。

 WMP 11は,シンガポールCreative Technology,韓国iRiver,韓国Samsung Electronicsといったメーカーが出す新型の携帯用MP3プレーヤと接続できる。当然この目的は,ライバルのiTunesとiPodが実現している一貫した操作性を,消費者に提供するためである。筆者が「iRiver Clix」とWMP 11を数週間使ってみたところ,「この組み合わせは非常に使いやすいものの,iTunesとiPodのレベルには達していない」と思った。ただしWMP 11とiRiver Clixの組み合わせは,価格や性能,互換性の面でiTunesとiPodより優れている。けれどもMicrosoft陣営は,これまでずっとiPodに対してこうしたメリットを打ち出してきたのに,Apple製品に対する消費者の熱気を全く冷ませていない。

 WMP 11のベータ版は無料で使えるが,Service Pack 2(SP2)を適用したWindows XPにしか対応していない。WMP 11の製品版は,家庭内ネットワークでコンテンツを共有できる機能を拡充するなど,ソフトウエアとURGEの両方に若干の改良を施し,2006年終わりごろリリースする。URGEの正式な運営開始は,米国時間5月17日の予定である。