5月第1週に出た米Gartnerの調査レポートによると,米Microsoftは「Windows Vista」のリリースをさらに2カ月遅らせる可能性があるという。しかしMicrosoftはこの見解を公式に否定した。筆者が入手した情報からみてもGartnerの予想は見当外れだ。

 ここで事実を整理しておこう。2006年の初めごろ,MicrosoftはGartnerに社内の作業を見せるという前例のない対応を取った。この対応の目的は,「2006年末にWindows Vistaを出荷する」というスケジュールで作業が進んでいることを示すためだ。ところがGartnerはMicrosoftの考えとは違う結論を出し,「Windows Vistaがあまりに複雑すぎることから2006年末の完成予定日に間に合わせることができず,リリースを遅らせる可能性がある」というレポートを書いた。Gartnerは,Windows Vistaの出荷開始が2007年4月~6月までに行えないとみている。Microsoftは直ちにGartnerの見解を否定したが,事実として広く報じられた。

 筆者が複数のMicrosoft内部関係者から得た情報は別にして,筆者個人のMicrosoftに関する経験から判断しても,Gartnerは間違っていると思う。Gartnerは根拠として,Microsoftがまもなく「Windows Vista Beta 2」をリリースし,それから完成まで9~12カ月かかるという点を挙げた。Gartnerは例として「Windows XP」を用い,「Windows Vistaは,Beta 2から最終版の完成まで5カ月かかってたWindows XPよりも複雑」と指摘した。「複雑さの点からみて,Windows Vistaは(Windows XPよりも)Beta 2から最終版まで16カ月かかった『Windows 2000』の方によく似ている」(Gartner)と述べた。

 ところがGartnerの行ったこの比較は馬鹿げている。Microsoftが1998年に「Windows 2000 Beta 2」をリリースした当時,それはまだ「Windows NT 5.0」という名前で呼ばれており,スケジュールから大幅に遅れていた。それから数カ月後にWindows 2000の開発指揮を任されたBrian Valentine氏が,開発プロジェクトを1年遅れで完了させた。現在Windows Vistaの開発は,Windows NT 5.0/Windows 2000 Beta 2に比べはるかに進んでいる。さらにGartnerのレポートに書かれているよりも,Windows Vistaは製品として出荷するバージョンにずっと近い状態にある。

 もっとも,「Windows Vistaがさらに遅れる」と予想することは,安全な賭けではある。Microsoftはこれまで何度もWindows Vistaのスケジュールを遅らせてきたし,2007年1月だった出荷予定を2007年4月~6月に遅らせても,販売面に大きな影響を及ぼさないだろう。Microsoftは「Windows Vistaの開発は予定通り」と言っておきながら,何度も遅延を発表している。しかし現在のところ,Microsoftが再度スケジュールを遅らせる準備をしている兆候はない。Gartnerは製品計画をもう一度遅らせるための準備と信じられる何かをMicrosoft社内で目にしたのだろうが,先ほど紹介したWindows 2000との比較は怪しい。

 関連するニュースを紹介しよう。MicrosoftはWindows Vistaビルド5381の作業を続けており,Beta 2として5月22日に完成させる予定だ。5月23日~25日(米国時間)にワシントン州シアトルで開催されるの「Windows Hardware Engineering Conference」(WinHEC)に出席すると,Windows Vista Beta 2の入ったDVDを受け取ることができる。その数日後に,テスターやその他パートナのほか,Community Preview Program(CPP)を通じて数百万の消費者にこのビルドを配布する計画だ。Windows Vistaを手にしたいと望んでいた人にとって,ついにその日がやってくる。

(Paul Thurrott)