「米Microsoftと米Yahoo!は2005年に協議したことがある」という内容のレポートが,The Wall Street Journal紙の5月3日版に掲載された。協議のテーマは,MicrosoftによるYahoo!買収の可能性についてだ。レポートによると,買収の目的は,オンライン・サービス市場におけるMicrosoftの地位を迅速に改善し,Microsoftにとって目の上のたんこぶである米Googleに対抗するためという。

 この買収劇は,規模の点で間違いなく独占禁止法の審査を受けることになる。しかし破談になったと思われる両社の取引は,別の理由で注目に値する。多くの人は,Microsoftが今のところ採算の取れていないオンライン・サービスを黒字化するまで支え続けるとみている。これまでも,離陸まで何年も市場で苦しんだMicrosoft製品はいくつかある。Yahoo!を買収していたら,両社の最も優れたサービスを組み合わせることで,Microsoftはオンライン・サービスに対する取り組みを強化できていただろう。

 両社が協議してから1年以上になるが,これ以上の話し合いは行わないようだ。The Wall Street Journal紙は,「MicrosoftはYahoo!との協議をやめたのに合わせ,自社のオンライン・サービスを活用するよう2005年第3四半期に体制を再編した」と暗に示している。

 MicrosoftはGoogleとの競争という見えやすいものだけでなく,ほかの圧力にもさらされている。株主が,ここ数年のあいだ株価が停滞していることと,2006会計年度第3四半期(2006年1~3月期)の業績からみると2007会計年度に20億ドルの追加支出が発生しそうなことについて,憤慨しているのだ。それに対しGoogleの株価は,Microsoftに比べ20倍弱高い400ドル前後で推移中だ。

 MicrosoftがYahoo!の買収を企てたというニュースが流れたのは,「Microsoftがインターネット事業MSNと米Time Warner傘下の米America Online(AOL)を統合しようと試みた」というレポートが出てから数カ月しかたっていない。MSNとAOLの統合に関する交渉が流れたのと,GoogleがAOL株式の5%を10億ドルで取得したタイミングが同じなのは,偶然の一致ではない。