米Googleは1カ月前,米Microsoftが次期Webブラウザ「Internet Explorer(IE)7」に搭載するインターネット検索機能について,「検索サービス『MSN Search』の利用を不当に推進している」との苦情を米司法省(DOJ)と欧州連合(EU)に訴えた。Googleは「DOJとEUの独占禁止法(独禁法)担当者は,今回のIE 7におけるMSN対応と,Microsoftが10年前に米Netscape Communicationsから喫した手ひどい敗北とのあいだに類似点を見出す」と考えているようだ。

 Google副社長のMarissa Mayer氏は「市場では検索機能にオープンな選択が望まれている。企業は提供する検索サービスの質でユーザーを取り合わなければならない」と述べる。「MicrosoftがMSNをデフォルトの検索サービスとして設定する行為は,正しいとは思えない。ユーザーに選ばせるべきだろう」(Mayer氏)。

 これまでのところ,DOJとEUはいずれもこの件に取り合っていない。またMicrosoftは「消費者がIE 7の画面右上にある小さな検索ボックスの設定を変更し,お気に入りの検索エンジンを使うようにするのはとても簡単」との主張を展開している。Microsoftの見解に従えば,Googleを使いたいのなら,IE 7で何も問題なくMSN Searchの代わりにGoogleを設定できるはずだ。

 著者はIE 7のBeta 2でこの機能を試してみた。その結果,IE 7の検索機能がMSN Searchと競合する検索エンジンに十分開放されていることを確認できた。筆者が執筆したIE 7 Beta 2のレビュー記事でこの機能について触れた部分を引用しよう。「Microsoftは初期設定の検索エンジンを簡単に変更できるようにしており,Googleにだって変えられる。『MSN Searchだけしか使えないようにしている』と疑えるような,愚かな仕組みは存在しない。それどころか,Microsoftは検索エンジン・プロバイダを集めたWebサイトを運営し,ユーザーが常時好みの検索エンジンを使えるようにしている」。

 Googleに対するMicrosoftの反応はなかなか面白い。Microsoftは「Googleが好むと好まざるにかかわらず,IE 7は『ユーザー本位』に設計してある」というのだ。「過去にどのような振る舞いがあったとしても,われわれは『ユーザーが主導権を握る』という原則を採用している」(MicrosoftのIEチームでジェネラル・マネージャを務めるDean Hachamovitch氏)。それでも「IE 7はGoogleに危害を及ぼす」という恐怖心が消えないのなら,以下の事実を考察してみよう。Mozilla FirefoxなどIEと競合するほとんどのWebブラウザで,Googleがデフォルトの検索エンジンに設定されている。そしてGoogleは先ごろ,大量にアクセス数を記録する市場トップの自社サイトで,Firefoxの販促活動を展開した。GoogleがリンクしているバージョンのFirefoxは,当然Googleのツールバーを搭載している。

 Microsoftは強力な独占主義者であるから,その動向は注意深く監視しなければならない。しかし多くの競合他社は,ここのところ一般に開放された市場ではなく法廷で争う道を選んでいる。おそらく,Microsoftが法的な問題を抱えることで弱体化すると思っているからだろう。筆者はGoogleの主張が軽率であると考えている。Googleは現在のインターネット検索市場で支配的な地位を持ち,しばらくはこの状態が続くだろう。GoogleとMicrosoftは市場シェア,広告の注目度,広告収入を獲得するために,法廷闘争ではなく昔ながらの競争でとことん競り合うべきだ。