HDDの将来展望について語るプロダクトデベロップメント バイスプレジデントのデイブ・モズリー氏
HDDの将来展望について語るプロダクトデベロップメント バイスプレジデントのデイブ・モズリー氏
[画像のクリックで拡大表示]

 2006年4月27日、3.5インチディスクとしては初めての垂直磁気記録方式を採用したハードディスク「Barracuda 7200.10」を発表したシーゲイト・テクノロジー(以下、シーゲイト)。垂直磁気記録方式をはじめ、様々な先進的技術をHDDに導入する業界最大手企業だ。その技術を支えるのが研究開発部隊。同社の研究開発拠点の一つ、シンガポールのサイエンスパークでプロダクトデベロップメント バイスプレジデントのデイブ・モズリー氏に今後の技術開発について聞いた。

■この研究開発拠点の規模と役割は?
 サイエンスパークはシーゲイト製品の開発研究拠点だ。エンジニアは200人。1日に300個のハードディスク(HDD)をテストモデルとして出荷する能力がある。サイエンスパークは研究開発担当なので、常に4~10年後を見据えて研究をしている。

■ハードディスクの容量は今後どれくらい増えていくのか。
 2年ごとに倍の容量になると考えられる。2006年に1平方インチ当たりの記録密度は130ギガビット。2008年にはそれぞれ250ギガビット/平方インチ、2010年には500ギガビット/平方インチになると予測している。

■それらは垂直磁気記録方式だけで達成できるのか。
 そうだ。既に長手方式では容量の限界がある。垂直磁気記録方式はこれからさらに広く採用されていくだろう。垂直磁気記録方式を利用するだけで、1平方インチ当たりの記録密度は500ギガビットから1テラビットまで上げられる可能性がある。

■それ以上の容量を達成するための技術はあるか。
 いくつかキーになる技術がある。Heat Assisted Magnetic Recording(HAMR)はその一つだ。2010年ごろには採用予定だ。HAMRはHDDのディスク(磁気メディア)にデータを書き込む際にレーザー光線を使ってディスクを加熱する技術だ。データビットは小さくなる一方だが、それにも限界がある。そこで、データを記録する場所にレーザー光線を当てて、加熱。ディスクは加熱することによってデータを書き込みやすくなるため、これによってデータの書き込みの安定化が見込めるのと同時に、記録密度の向上も図れる。垂直磁気記録方式と併用することで、記録密度は垂直磁気のみを採用したHDDの3倍ほどになる。

 また、Self Organized Magnetic Arrays(SOMA)やBit Patterned Media (BPM)recordingなどもHDDへの採用を考えている。SOMAは形もサイズもバラバラな磁性体をある程度同じ大きさ、同じ形にすることで記録密度を上げる技術だ。BPMは1ビット中の磁性体の数を少なくして、効率的に磁性体を利用する技術。これらの技術によって、記録密度は50テラビット/平方インチに高まるだろう。ロードマップとしてはこれらの技術が採用されるようになるのは、およそ10年後だろう。

■コンシューマーはHDDに対して「壊れやすい」というイメージを持っている。
 HDDはこの10年で一気に信頼性のあるパーツになったと考えている。シーゲイトも様々な技術を導入することで信頼性を上げてきた。ただ、いまだに構造自体は「壊れ得る」のは確か。我々自身も故障したHDDがユーザーから戻ってくることはビジネス上マイナスだ。コンシューマーにとっても幸せとは言えない。コンシューマーに対しては特に信頼性を訴えることは重要で、我々のミッションとして最も重視している点でもある。今後はさらに壊れにくいHDDを作る技術を導入するとともに、コンシューマーに対して広くシーゲイトの信頼性をアピールしていくことも重要と考えている。