欧州連合(EU)の欧州委員会(EC)の弁護士は4月24日,米Microsoftに対する独占禁止法(独禁法)裁判で,Microsoftが社内でやり取りした電子メールを提出した。そこには,ECが「違法行為」と呼ぶ行為について,詳細が記述されている。電子メールには,「Microsoftがメディア・プレーヤで競合している米RealNetworksを叩きつぶすため,かつてWebブラウザで争った米Netscape Communicationsに対して行ったのと同じ方法を使う」とあった。

 Microsoftのある重役は1997年に「RealNetworksはNetscapeと似ている。唯一の相違は,今回われわれに,メディア・プレーヤ市場での戦いを早い段階で始められるチャンスがあることだ」と電子メールで書いた。このやり取りでの注目点は,1997年6月5日という電子メールの日付である。これは,Netscapeに対する違法な手法によって,Microsoftが米独禁法違反で有罪となる約4年前のことだ。そのころMicrosoftのCEOを務めていたBill Gates氏は,当時「ストリーミング・メディアは戦略的な領域であり,勝利しなければならない」と語っていたという。

 反Microsoftを掲げる業界団体European Committee for Interoperable Systems(ECIS)の弁護士は,「当社(Microsoft)がストリーミング・メディア市場で後塵を拝していることから,RealNetworksと競争する際の『ルールを変更する』と決めた」という内容の,1999年付け社内メモを提出した。「ストリーミング・メディアの戦いを,Network対Realから,Windows対Realに変えろ」とあり,Microsoftが以前Netscapeを負かすのに使った戦略をほのめかしている。

 Microsoftは,米Apple ComputerがiTunesとiPodで成功したことを例に挙げ,「WindowsにWindows Media Player(WMP)をバンドルしてから競合他社が繁栄した」ことを示した。これに対しECの弁護士は,「実際のところ,iTunesはWMPと直接競合していない」点を指摘し,Microsoftの証拠を否定した。「iTunesはおおむね有料ダウンロード・サービスに的を絞っており,ストリーミング・メディアはあまり対象にしていない。AppleがMicrosoftとの一騎打ちをやめて音楽サービス事業に移ったのは,市場から締め出されたことの反証ではなく,証拠といえる」(EC弁護士のPer Hellstrom氏)。さらにHellstrom氏は,MicrosoftがWMPの競合製品としてMacromedia Flashを挙げたことに対し,異議を唱えた。「Flashは,機能をすべてそろえたメディア・プレーヤではない。第一,Windows XPにバンドルされている。それにFlashは市場で成功している」(Hellstrom氏)。