米Microsoftと欧州連合(EU)の欧州委員会(EC)は4月24日,MicrosoftによるEUの独禁法違反に関する裁判で口頭弁論が始まるため,ルクセンブルクにある欧州第一審裁判所でとうとう対面した。ECが,欧州のOS市場において独占的な力を乱用して競争を阻害したとしてMicrosoftを告発したのは,2004年3月のことだ。

 開廷に先立って発表した声明のなかで,Microsoftはこの問題のポイントを「企業は新機能の開発を通じて製品を改善できるのかという点と,成功した企業は貴重な知的財産権を競合他社に譲渡する必要があるのかという点」と述べた。「この裁判の対象となるすべての市場で,健全な競争と相互接続性が存在しており,当社はこうした事実を法廷で訴えていく」(Microsoft)。

 ECはMicrosoftに6億1200万ドルの罰金を科すとともに,Windows Media Player(WMP)非搭載版Windows XPを出荷するよう命じた。さらに,サーバー分野の競合他社に対して技術文書を提供することも求めた。Microsoftにとってはこの要求が争点であり,とても受け入れられるものではない。その結果「毎日罰金を科す」という可能性が浮上してきた。

 Microsoftは法廷で同日,「ECは,当社がWMPとWindowsを不法に結びつけたと判断する『根本的な』誤りを犯した」と発言した。Microsoft弁護士のJean-Francois Bellis氏は「ECの理論は,あらゆる部分で間違いだらけ」と述べ,WindowsにWMPを搭載したことで消費者にもたらされた多くの利益を指摘した。さらにBellis氏は「メディア・プレーヤ市場の競争は現在も活発で,ECの主張した『WindowsへのWMPバンドルが市場に及ぼす影響』の予測は外れた」と付け加えた。

 Microsoftは,ECの要求に従って発売したWMP非搭載版Windows XPが市場で明らかに失敗した点にも言及した。WMP非搭載版Windows XPはほとんど売れていない。販売数はわずか1787本で,2005年におけるWindows XPの販売数の0.005%にしか過ぎない。そのうえ,WMP非搭載版Windows XPをプリインストールしたパソコン・メーカーは1つもなかった。「1社もない。(WMP非搭載版Windows XPは)誰も求めていない製品だ」(Bellis氏)

 対するEC側の弁護士は,同じ日に口頭弁論を行う。両陣営は,13人の裁判官に対して主張を展開する。Microsoftがそろえた弁護士,技術専門家,アドバイザの数から判断すると,この裁判に対するMicrosoftの極めて真剣な姿勢が分かる。裁判に負けると,Microsoftは思い通りの製品を出荷できなくなる可能性がある。この裁判の影響は,Microsoftが2006年中になんとか完成させようとしているWindows Vistaにも波及しかねない。