中国の胡錦濤国家主席が4月18日(米国時間)に訪米するが,最初の訪問先はホワイトハウスで催される公式晩餐会ではない。胡主席は,まず米Microsoft会長のBill Gates氏とディナーをともにして,それから米Boeingの航空機工場を巡る。MicrosoftとBoeingは,いずれもワシントン州シアトル地区にある。

 胡主席の訪米の主目的は,「中国が近い将来,全世界で米国の経済力に影を落とすのでは」という米国の懸念を緩和することにある。13億の人口を擁す中国は,前例のないペースで都市部の近代化を推進する国家主導の計画により,消費者市場が世界で最も急速に拡大している。ただし,対照的な状況が目立つ。北京や上海などの都会は世界有数の近代都市であるのに,西部の農村地域には質素な昔ながらの暮らしがみられる。

 中国で大きな成功を収めている米国企業は複数あるが,Microsoftは成果をあげていない。この国では,同社製ソフトウエアは海賊版が当たり前で,中国政府は最近まで問題解決に向けた取り組みをほとんど実施していなかった。ところが米国政府筋からの情報によると,「中国の政策は,この数カ月で知的財産を保護する方向に変化してきた」という。そして中国政府は2006年3月に,すべての中国系パソコン・メーカーに対し,OSをプリインストールして出荷するよう命じた。こうすることで,消費者がパソコンを購入すると,OSを合法的に入手できることになる。

 Gates氏と胡主席がディナーの席でなにを話すかは不明だ。話題にのぼりそうなテーマはたくさんある。海賊版ソフトウエア,業務アウトソーシング,研究所など中国向け投資,Gates氏の慈善事業,などが話し合われるのではないだろうか。