英国で国民用IDカードの発行などを定める法案「Identity Cards Bill」が,英国時間3月30日に裁可(Royal Assent)を得て成立した。英内務省が同日明らかにしたもの。この法案は,3月29日に両院(貴族院,庶民院)を通過している。

 Identity Cards Billは,個人の身元確認を強化する取り組み「National Identity Scheme」に関する法律。17歳以上の全国民を対象に,国民用IDカードの発行などを行う。氏名と住所のほか,光彩パターンや顔,指紋などのデータベースを構築し,個人を特定できるシステムを作る。内務省では,「容易に身元を確認できる手段を提供することで,不法な移民や就労を抑止し,組織犯罪やテロに対抗する」としている。

 ただし2010年1月1日までは,パスポートを更新する国民に対して,国民用IDカードを受け取らないという選択肢も用意する。

 また英国政府は,パスポートとIDカードの発行などを担当する組織「Identity and Passport Service(IPS)」を新設し,4月1日より業務を開始する。IPSは,パスポート発行を管理する組織United Kingdom Passport Service(UKPS)および内務省の移民局(IND:Immigration and Nationality Directorate)と連携し,発行業務のほか,身元確認のための手段などを提供する。

 なお米メディア(InfoWorld)によると,内務省は2008年までに国民用IDカードの発行を始めたい考えという。同メディアは,英国政府が1年間で約5億8400万ポンド(約10億ドル)の制度運用費がかかると見積もっており,10年間有効なIDカード1枚当たりの発行コストを30ポンド(約52ドル)と報じた。

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