EU(欧州連合)が先ごろ米Microsoftに送った書簡のなかで,独占禁止法(独禁法)担当委員トップのNeelie Kroes氏は「Windows Vistaにある種の機能を付加したら,欧州での販売は認めない」と警告した。EUがどの機能を指しているのか定かではないが,Kroes氏の広報担当者によると,EUはインターネット検索機能,Internet Explorer(IE)7,デジタル著作権管理(DRM)技術,米Adobe SystemsのPDFと競合する新しい文書形式Metroを挙げたという。

 EUは「これら機能のすべてに共通項がある」とする。「こうした機能は,いずれもMicrosoftからだけでなく,ほかの企業からでも簡単に入手できる。Microsoftは企業間の競争を損なう目的で,Windowsにこれら機能を同梱しかねない」(EU)。

 Kroes氏は3月第5週に,「Microsoftには,欧州の競争法に則ってWindows Vistaを設計してもらいたい」と述べた。「違反するような設計をするとしたら,馬鹿げた話だ」(Kroes氏)。

 さらにEUは,サードパーティの開発者に悪影響を及ぼすおそれがあることから,Windows Vistaに搭載される各種セキュリティ技術についても懸念を示している。EUは,Windows Vistaのセキュリティ・アプリケーション「Windows Defender」を名指ししたわけではないが,米Symantecや米McAfeeなどの企業が競合製品を販売していることから,同アプリケーションも念頭にあるようだ。

 EUから書簡を受け取ったことを3月第4週に認めたうえで,Microsoftの広報担当者は「当社はEUの期待に添っている」と述べた。「消費者は,安全性が高く,機能が豊富なOSを求める。当社はこうした要求に応えられるようWindows Vistaを設計してきた。その際,法的な責任も尊重している」(Microsoft広報担当者)。現在EUは,2007年初頭のWindows Vista発売を中止させるための正式調査が必要かどうか,検討している最中だ。

 この件には関連ニュースがある。Microsoftは現在抱えているEUによる独禁法違反の件でかなり神経質になっているようで,EUの裁判がどのように行われるのかを確認しようとして,模擬裁判を実施するために数人の元EU判事を雇った。模擬裁判は2006年1月に開いたが,Microsoftが勝訴したかどうかについては伝えられていない。本番は,3月30日と31日にベルギーのブリュッセルで行う。この非公開の裁判で,MicrosoftはEUの独禁法担当委員と対峙する。