米IBMは,高速通信が可能なシリコン・ゲルマニウム(SiGe)製の無線通信LSIを開発した。IBM社が米国時間2月6日に明らかにしたもの。「現行のWi-Fi対応無線LANに比べ,10倍高速なデータ送受信が可能となる」(同社)。

 この無線通信LSIは,30G~300GHzのミリ波のうち60GHz帯の周波数を利用する。通信に使う周波数が高いことから,従来の半導体製造技術ではLSIの設計が難しく,製品に組み込むことが困難だったという。

 同社は「SiGe技術を用いて複数モジュールを高いレベルで統合し,アンテナを直接パッケージに組み込むことで,必要なコンポーネント数を減らし,システムのコスト削減につなげる」と説明する。試作したチップでは,受信部,送信部,2つのアンテナを10セント硬貨(直径17.9mm)のサイズに納めた。

 10m以内の範囲で通信を行うPersonal Area Network(PAN)への適用を想定しており,「非圧縮の高精細映像を無線送信することが可能で,例えばDVDプレーヤから壁に取り付けたプラズマ・ディスプレイにビデオ信号を送ることに使える」(同社)。

 IBM社はカリフォルニア州サンフランシスコで開催中の国際固体素子回路会議(ISSCC)で2月7日に,このLSIに関する発表「A 60-GHz Receiver and Transmitter Chipset for Broadband Communications in Silicon」(半導体によるブロードバンド通信向け60GHz帯送受信LSI)を行う。

 なお米メディア(CNET News.com)は,IBM社の試作したLSIが策定作業中のPAN規格IEEE802.15.3cに対応しており,通信速度が現在600Mビット/秒以上,将来の目標が最大1.4G~1.5Gビット/秒と報じている。

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