米IBMは,光の伝搬速度を通常の300分の1未満まで減速できるシリコン素子の開発に成功した。IBM社が米国時間11月3日に明らかにしたもの。「こうした光素子を利用することで,コンピュータやその他電子機器の処理速度が飛躍的に向上する」(同社)

 同社は,穴を開けたシリコンでフォトニック結晶導波路を作り,これに光を通すことで伝搬速度を落とすことに成功した。この素子は,導波路に加える電圧を変えると光の速度を制御する機能も持つ。「光を減速する手法は,実験室レベルでは数年前から知られていた。しかしシリコン・チップ上で速度を能動的に制御でき,その素子を標準的な製造技術で作ったのはこれが初めて」(同社)

 同社は,この素子をLSIなどに組み込み,光遅延配線,光バッファ,光メモリーに応用可能とみている。同素子の大きさは半導体素子と同程度で,シリコンなど標準的な材料で作る。製造作業も,現在の半導体製造工場を多少改造するだけで対応できるという。

 詳細は,英国の科学雑誌Nature(同日版)に掲載する。論文のタイトルは,「Active control of slow light on a chip with photonic crystal waveguides」。

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