「産業市場よりも先に,消費者市場向けに新技術が紹介されるケースが増えている。この動向は,今後10年でITに大きな影響を与えるだろう」。米Gartnerは米国時間10月20日,米オーランドで開催中のシンポジウム「Gartner Symposium/ITxpo」においてITを消費者向けに製品化することについて議論した。

 同社によれば,多くの主要ITベンダーは,消費者市場の大規模な収益機会を狙い,これまで以上のリソースを消費者市場向け製品とサービスに投入している。新技術が最初に消費者向けに製品化されるため,2007~2007年にかけて企業がITシステムに導入する新技術の大半は消費者向けアプリケーションを基にするものになるという。

 従来の企業向けソフトウエアも重要だが,その多くの機能は消費者向けに設計されたソフトウエアでも実行できるようになっている。そのため,同社は,「企業のITマネージャは,従業員がこれらの製品をワークフローとプロセスに導入する際に管理する方法を学ばなければならなくなっている」と指摘している。

 自由に利用できるGoogle Desktop,AOL,Skypeといった消費者向けソフトウエアは,日常の仕事に有用なツールだと考えられているため,使用の制御に成功している企業は少ないという。企業ポリシーや監視により,従業員によるオンライン上の不適切なコンテンツの閲覧は抑止できるが,従業員によるオンライン銀行の利用,旅行の予約,知人や同僚とのIMの交換などを抑制するのは難しいという。

 同社副社長兼リサーチ・ディレクタのSteve Prentice氏は,「洞察力のあるCIOが,長年使われてきた古いインフラからサービス中心型の構造への変更を試みるならば,消費者向けIT製品の利点を活かしながらもそのリスクに対処するという現実に即したアプローチを採用しなければならない」とコメントしている。

 また,同社によれば,消費者部門の成長は今後10年で半導体の需要をけん引する単独でもっとも大きい要因となるという。「業界の基礎的な研究開発は,軍事や企業市場よりも消費者市場が大半をけん引するだろう。そのため,製品のライフサイクルが大幅に短縮される。消費者向け製品のライスサイクルはますます短くなる方向に向かっている」(同氏)

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