米国出版者協会(AAP:Association of American Publishers)は,米Googleが計画している「Google Print Library Project」に関して,許可なく書籍をデジタル化し配布するのは著作権侵害に当たるとして提訴した。AAPが米国時間10月19日に発表した。同協会は,Google社の経営陣と同プロジェクトについて話し合いを行なってきたが,これが決裂したため訴訟に踏み切ったことを明らかにした。

 AAPは,主要メンバーであるMcGraw-Hill,Pearson Education,Penguin Group(USA),Simon & Schuster,John Wiley & Sonsの代理人として今回の訴訟を起こした。AAP側は,裁判所に対し,Google社が著作権のある書籍の全文をスキャンする行為は著作権侵害に当たるという認定,また著作権者の許可なくスキャンする行為の中止命令を求めている。

 AAP会長であり元コロラド州選出の下院議員であるPatricia Schroeder氏は,「出版業界は,Google社に対する訴訟と自らの権利を守る戦いに結束している。作家や出版社は,Google社の検索エンジンの有用性を理解しており,Print Libraryが素晴らしい情報源に成り得ると考えている。しかし,現行の計画内容のままでは,Google社が作家と出版社の才能と財産にただ乗りして数百万ドルの利益を上げようとしていることに他ならない」とコメントしている。

 Google社が前年発表したGoogle Print Library Projectは,世界の大規模図書館の蔵書をスキャンしてデジタル化し,インターネットで全文検索ができるデータベースを作成するというもの。プロジェクトの一環として,スタンフォード大学,ハーバード大学,ミシガン大学の蔵書のスキャンとデジタル化が進められている。ニューヨーク公立図書館とオックスフォード大学も同プロジェクトに参加しているが,共通財産となっている書籍しか提供していない。

 Google社は,同プロジェクトが米国著作権法に定められた書評目的での抜粋を許可する版権物の公正使用に完全に一致しているとという見解を明らかにしている。しかし同社は,さまざまな懸念に対処すべく8月に同プロジェクトを一時休止中断している。AAPによれば,Google社は11月1日にプロジェクトを再開する計画だという。

 Google社との話し合いの中で,AAPは同プロジェクトにおいて合法に著作本を利用する方法として,ISBN番号システムを利用して著作権者の許可を求めるように提案したが,Googles側に拒否されたことも明らかにしている。

 AAPの訴訟を受け,Google社の公式ブログには同社CEOのEric Schmidt氏が米Wall Street Journal誌に寄稿した文章が掲載された。

 同氏は,同プロジェクトがGoogle社の主要ビジネスである検索エンジンと同じ考え方に基づくものであると説明。「ユーザーが探している情報に誘導するために,われわれはWeb上で見つけたすべてのサイトをコピーしてインデックスする。そうしなければ有用な検索エンジンはできない。同じことがGoogle Print Library Projectについても言える」と述べている。

 Google Printでは,ユーザーが検索して見つけた本を購入できるようにオンラインの小売り業者のサイトに導くが,Google社が金銭的な利益を得ることはない。また,Library ProjectによるGoogle Printのページ上にも広告は掲載しないと説明。著作権の保有者は,容易に作品をGoogle Printから外すことができるため,訴訟は必要ないと主張している。最終的には,Google PrintとGoogle Libraryプロジェクトは,ユーザー,出版業界,作家に利益をもたらすと述べている。

 Google社は,同プロジェクトに関して作家団体のAuthors Guildからも提訴されている。

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