米Eolas Technologiesが,米Microsoft の「Internet Explorer(IE)」に不正利用されたと主張する特許について,米特許商標局(USPTO)が有効性を認めるもようだ。USPTOが同特許の再審査を完了し,再審査認定を交付する意思通知を発行したことを,米カリフォルニア州立大学が米国時間9月28日に明らかにした。

 問題となっている特許は,米国特許番号「5,838,906」,タイトルは「Distributed hypermedia method for automatically invoking external application providing interaction and display of embedded objects within a hypermedia document」。ハイパー・メディア・ドキュメント内で,外部コンテンツを自動的に呼び出し,埋め込みオブジェクトとして表示して,(ハイパー・メディア・ドキュメントとの)相互作用を提供する方法に関するもの。1994年10月17日に申請し,1998年11月17日に成立した。

 もともとは,Mike Doyle氏という人物がカリフォルニア州立大学で開発し,その後,同氏が1994年にEolas社を設立した。同特許に関する独占的なライセンスは同社に供与されている。

 同特許を巡り,Eolas社は1999年にMicrosoft社を相手取り,訴訟を起こした。2003年8月に陪審員がMicrosoft社の特許侵害を評決し,Microsoft社に約5億2100万ドルの支払いを言い渡した(関連記事)。Microsoft社はこの評決を不服とし,支払い命令の取り消しと,再審理の要請を行ったが,同時にIEの仕様変更という回避策も挙がった。

 これを受けて,World Wide Web Consortium(W3C)は2003年10月に,同特許が無効であると主張し,USPTOに再審査を要求。W3Cは「同特許が対象としているらしいオブジェクト組み込み技術は,Webが利用され始めた早い時期からHTML標準の一部となっていた」と説明し,「すでに普及した技術の利用を困難にする同特許を認めると,Webを運用することで莫大な経済的/技術的な損害が発生してしまう」との懸念を示していた。USPTOは同特許の再審査を同月開始した。

 ちなみに,Eolas社のMicrosoft社に対する特許侵害訴訟については,米連邦控訴裁判所が2005年3月に,審理の差し戻しを言い渡している。その際,Microsoft社は「当社にとってだけでなく,インターネット・ユーザー全員にとっての勝利だ」とするコメントを発表した。

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