「インドのICT(情報/通信/技術)企業は,輸出市場に注力することにより,国内市場の大きなチャンスを逃している可能性がある」。米Gartnerがインドで開催中の「Gartner Summit India 2005」において,現地時間8月31日に発表した。

 同社によれば,インドは,世界でもっとも成長が速いICT市場であり,2004年から2008年までに年間平均成長率19%で拡大すると予想されている。スタート時点の規模は,2番目に成長が速い中国よりも小さいが,インドは中国を上回る速度で成長を続けているという。Gartner社では,インドのICT支出が2004年の295億ドルから2008年には548億ドルを超えるまでに拡大すると推測している。

 ITサービスやBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の世界市場では,インドのサービス・プロバイダの名前がいくつか挙がるようになってきた。しかし,インド国内市場で地位を確立しているのは,国外の世界的企業となっている。インドにおけるICT支出で,国内ベンダーの占める割合は42%に留まっている。

 Gartner社は,インドについて「サービス輸出を中心とする事業の影響が国内向け事業の影響を大きく上回る,世界でも数少ない国」と説明。同国におけるICTの展開がサービス輸出に大きく偏っていると指摘している。

 同社の調査担当副社長のPartha Iyengar氏は,「インドにおける国外企業の支配は,電話会社以外の国内で信用できるICTインフラ・プロバイダの欠如とインドの大手サービス・プロバイダによる国内成長の軽視によるものだ」と分析。同氏は,現在およそ165億ドル規模の輸出中心型の業界は,地域のプロバイダが国内市場の獲得に失敗した場合,世界市場での地位も危険にさらされる可能性があると忠告している。

 インドでは,多国籍ブランドとのアウトソース契約をする企業が増えている。インドの技術プロバイダが国内市場で地位が無く,ハイエンドの契約で競争力を持たなければ,世界市場で同じような契約を望むことの障害になると指摘している。

 「明らかに,インドのICT業界は分岐点に立っている。技術プロバイダ,エンドユーザー,政府が協力して国内外向けにバランスの取れたICT発展に取り組めば,インドは成功を収めるだけでなく,他の新興国の市場開発モデルとしての役割りを果たすだろう」(同氏)

 また,同社は,インドにおける携帯電話サービスの売上高が急上昇していることを指摘。2004年の同市場はアジア太平洋と日本地域においてもっとも成長率が高く,50億ドルに達した。売上高は,年間平均成長率35.6%で推移して2009年末までに240億ドルに達するという。サービス・コストの低下と低価格な携帯電話機の導入により,2009年までに国内人口の30%にまで普及する可能性があると同社は予想している。

 市場機会と普及は拡大するが,普及が期待される大部分が低所得のユーザーとなるため,1人当たりの平均売上高(ARPU)は低くなるという。今後18~24ヶ月で月ごとのARPUが5ドルほどになると予想される。同社は,サービス売上高にかかる圧力を緩和するために,着信音,ゲーム,音楽配信といった付加価値サービスで差別化を図ることが重要だとしている。

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