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【新連載】有限責任事業組合(日本版LLP)(1):中堅中小企業にも利用価値のある制度

2005/11/18

 最近、日本版LLPとか、有限責任事業組合という言葉を目にすることが多くなったのではないでしょうか。2005年に商法が改正され、会社法(いわゆる新会社法)が成立しました。

 意外に思われるかもしれませんが、これまで日本には「会社法」という法律はなかったのです。会社法に相当する内容は、商法に定められています。

 新会社法については、次回以降に詳しく解説したいと思います。新会社法を含めた新しい企業法制の特徴の1つは、事業を行う場合のスキームの多様化を進めていることにあります。有限責任事業組合というのも、スキームの多様化の1つといえるでしょう。

他社との共同事業などに有効なLLP

 有限責任事業組合(以下、「LLP」といいます)は、商法や会社法ではなく、「有限責任事業組合契約に関する法律」に根拠をおくものです。既に今年8月1日から施行されています。なお新会社法は、2006年5月施行予定です。

 ちなみに、「投資事業有限責任組合」というよく似た制度がありますが、これはファンドを作るための組合で、想定される利用形態が異なります。LLPでは、すべての組合員が事業に参加する必要があり、投資目的のみでの参加はできません。

 LLPといっても、これから起業する人の問題で、すでに会社を設立して企業経営を行っている人には関係ないと思われるかもしれません。しかし、LLPはこれから起業を考えている人だけを念頭においた組織ではありません。

 中小企業においても、その企業単独で生き残っていくのは難しくなっており、シーズを出し合ってジョイントベンチャーを立ち上げるといったことも増えてきているのではないでしょうか。そのような場合、LLPは有力な選択肢の一つです。

 有限責任事業組合という制度は、次の3つの特徴があります。

1:出資者全員の有限責任

2:内部自治の徹底

3:構成員課税の適用

1:出資者全員の有限責任

 出資者全員の有限責任とは、出資者が出資額までしか責任を負わないということです。株式会社や有限会社と同じです。有限責任事業組合というのは、名前から分かるように「組合」です。

 組合というのは、民法の条文に定められている契約類型の一つで、民法を根拠にしている組合を一般に民法上の組合と呼びます。これまでの民法上の組合であれば、無限責任を負っていたのに対して、出資者の責任が限定されており、より出資がしやすい=リスクが出資金額に限定される、ということになります。

2:内部自治の徹底

 内部自治の徹底というのは、ちょっと分かりにくいかと思います。株式会社では、取締役会や監査役のような、経営者に対する監視機関の設置が強制されます。従って小規模な組織の場合、決定の迅速性が損なわれるなどのデメリットも大きくなります。

 LLCの場合は、機関設置が強制されず、当事者の合意により、柔軟かつ機敏な対応ができるということです。また株式会社と異なり、利益や権限の配分が出資金額の比率に拘束されないこともメリットといえます(第2回で説明します)。

3:構成員課税の適用

 構成員課税の適用というのは、当該LLPに課税されずに、出資者に直接課税されるということです。つまり、LLPに法人課税が課せられた上に、出資者への利益分配にも課税される、という"二重課税"がないのです。これを「パススルー」と言います。

 これらの特徴からも分かるように、単純に言うと会社と民法上の組合の中間的な形態と言えます(下表)

 では次回は、もう少し具体的に、SMBが大手企業と共同研究開発を行う場合を想定して、利益や権限の配分が出資金額の比率に拘束されないということが、具体的にどのような意味を持つか見てみたいと思います。

表 LLPの特徴と他の組織との違い
 株式会社民法上の組合LLP
有限責任制○(有限責任)×(無限責任)○(有限責任)
内部自治原則×損益や権限の配分は出資額に比例。取締役会や監査役が必要○損益や権限の配分は自由。監視機関の設置が不要○損益や権限の配分は自由。監視機関の設置が不要
構成員課税(パススルー課税)×(法人課税)○(構成員課税)○(構成員課税)

◆関連リンク◆ 経済産業省:「有限責任事業組合(LLP)制度の創設について」(http://www.meti.go.jp/policy/economic_oganization/llp_seido.html)


→「SMBのための法律入門」の記事一覧へ

■北岡 弘章 (きたおか ひろあき)

【略歴】
 弁護士・弁理士。同志社大学法学部卒業、1997年弁護士登録、2004年弁理士登録。大阪弁護士会所属。企業法務、特にIT・知的財産権といった情報法に関連する業務を行う。最近では個人情報保護、プライバシーマーク取得のためのコンサルティング、営業秘密管理に関連する相談業務や、産学連携、技術系ベンチャーの支援も行っている。
 2001〜2002年、堺市情報システムセキュリティ懇話会委員、2002年から現在まで、発明協会産学連携経営等支援事業に係る専門家、情報ネットワーク法学会情報法研究部会「個人情報保護法研究会」所属。

【著書】
 「漏洩事件Q&Aに学ぶ 個人情報保護と対策 改訂版」(日経BP社)、「人事部のための個人情報保護法」共著(労務行政研究所)、「SEのための法律入門」(日経BP社)など。

【ホームページ】
 事務所のホームページ(http://www.ne.jp/asahi/lawyer/kitaoka/)の他に、ブログの「情報法考現学」(http://kitaoka-lawoffice.cocolog-nifty.com/)も執筆中。

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