BCNがまとめたパソコン・デジタル家電の震災インパクトのポイント。全体として、震災直後の週(3月14日からの1週間)で落ち込んだが、その後、売り上げが戻り始めているという
BCNがまとめたパソコン・デジタル家電の震災インパクトのポイント。全体として、震災直後の週(3月14日からの1週間)で落ち込んだが、その後、売り上げが戻り始めているという
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BCNデータマーケティング部部長でエグゼクティブアナリストの道越一郎氏が説明。「花見などは自粛ムードが強いが、デジタル家電業界における自粛ムードは一色ではない」
BCNデータマーケティング部部長でエグゼクティブアナリストの道越一郎氏が説明。「花見などは自粛ムードが強いが、デジタル家電業界における自粛ムードは一色ではない」
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 全国大手家電販売店のPOSデータを基に、デジタル機器の販売台数や金額情報を提供するBCNは2011年4月7日、パソコンや薄型TVなどデジタル家電の主要製品群に対する東日本大震災の影響を発表した。

 記者会見に登壇した同社アナリストの道越一郎氏は冒頭、「東日本大震災のマイナスインパクトは限定的。デジタル家電の売り上げは戻り始めており、力強い動きがある」と調査の結果を総括した。

 被災中心地である岩手県、宮城県、福島県の3県における3月11日~3月31日までのデジタル家電全体の販売損失をBCNが試算したところ、数量ベースで前年同期比69.6%減、金額ベースで同74.7%減となった。しかし全国では同期間で数量、金額ともに1.2%減にとどまっている。

 前年比などの絶対比較データは、3月11日から3日間で一部欠落した販売データを推計して「推計値」として算出した。データ提供会社は全国23社2336店舗(2011年3月現在)だが、震災により55店舗が被災したとしている。ただし、震災以降の3週間で十数店舗が復旧したという。

 震災前後約2カ月間の地域別販売台数(推計値、2月7日~4月3日)を見ると、北海道・東北と関東の落ち込みが他の地域に比べて大きく、震災当日以降最初の週となる3月14日からの週がそれぞれ43.2%減(前年比)と38.5%減(同)。調査可能な直近の週(3月28日~4月3日)でも、プラスに転じていない。一方、他の地域(信越・北陸・東海、近畿、中国・四国、九州・沖縄)とネット販売では、直近の週は全て前年を超えた。全国で見ると3月14日からの週で17.9%減(同)と落ち込んだものの、直近の週で1.4%のプラスに転じた。3月の最終週に向け販売台数が上向きになった理由は、「エコポイント終了直前の駆け込みによる」(道越氏)とした。

 同期間におけるパソコンの地域別販売台数に目を向けると、被災中心地を含む北海道・東北が3月7日の週以降、全ての調査週でマイナスにとどまっている。一方、信越・北陸・東海地方の10.9%増を筆頭に、他の地域は遅くとも3月28日の週には全て前年を超えた。「インテルチップセットの出荷停止もあり、震災とのダブルパンチのパソコン業界は打撃が大きかったが、震災以降の戻りが早い。買い替えサイクルにも入ってきており、堅調さを期待」(道越氏)と説明した。

 なお、長期で見ると、2011年3月は販売台数で前年同月比4.8%減となり、2010年2月以来の前年割れだった。年初の春モデル発売延期が影響したとBCNは分析。特にデスクトップパソコンの販売台数は2009年9月以来初めてマイナスに転じた(2.2%減)。

 また、震災特需の製品にも言及。計画停電の影響でUPS(無停電電源装置)の販売金額が3月14日の週に、前年同週比で6倍にもなった。また、ワンセグ液晶テレビやワンセグチューナーも軒並み売り上げを伸ばした。ただしその後、ワンセグ液晶テレビは前年の水準に戻っている。

 今後、復興特需になり得る製品として、道越氏はテレビとパソコン、携帯電話およびスマートフォンを挙げた。パソコンが特需の1つとなる理由として、「生活必需品に近付いた」ため。もう1つに、「足元ではSandy Bridge搭載パソコンの買い控えが顕在化していた。今後、復興需要とともに、Windows Vistaを搭載したデスクトップ一体型パソコンなどからの買い替えも起こる」とした。