最後に、NTT東西の次世代IP網として展開してきたNGNに関するユーザー企業の動向を見てみる。
NGNを使って提供されるフレッツ 光ネクスト回線は、2010年度末までには東西双方の光サービスエリア全域で利用可能になる見通しだ。しかし、企業ユーザーの間ではそれほど興味の対象とはなっていない。インターネットVPNをフレッツ回線で構築したユニ・チャームは「インテグレータの提案にはNGNがポイントに挙げられていたが、料金や機能は変わらないので選択の要件にはならなかった」(弓野哲史・業務改革本部情報システム部副部長)と話す。
フレッツVPNシリーズの全体の利用状況からNGNに移行したユーザーを見てみると、NGN版のフレッツ・VPNワイド/ゲートの割合は29.9%だった。昨年の7.7%から徐々に移行は進んでいるようである(図1)。
2009年8月に全国約70店舗にフレッツ・VPNワイドを導入したレストランチェーンのWDIは、「東西間でNGNの対応状況に差があり、導入に思った以上の時間がかかった」(杉山弘高BPR推進部長)と指摘する。
約3カ月で50店舗への導入が完了した東日本地域に比べ、西日本では20店舗の導入完了が2010年4月までずれ込んだ。「西日本では地域によって、安定したスループットが出ない場所があった。収容局を変えてもらうなどの対応により、改善できた」と振り返る。
NGNの新サービスの認知度は3割
フレッツVPNの機能はNGNになっても大きく変わらなかったが、この6月にはNGN限定の新サービスが登場した。ひかり電話の通信機能を使って最大1Mビット/秒のダイヤルアップ通信ができる「データコネクト」である。このサービスの認知度を尋ねたところ、「知っている」と答えた企業は全体の32.3%にとどまった。使っている、または使ってみたいと答えた企業は6.9%だった(図2)。
NTT東西は、データコネクトの適用例の一つとして、ISDNより高速なバックアップ回線を提案している。だが、多くのユーザーがバックアップ回線として常時接続型サービスを選んでいる現状では、ニーズは限定されそうだ。
