クラウドに限らず、ネットワーク越しにシステムを利用する例は多い。管理負荷を軽減する必要性から多くの企業が、仮想化技術を使ってサーバーを特定の拠点に集約したり、データセンターに移すといった取り組みを進めている。なかでもサーバー仮想化技術を採用している企業は、既に半数を超えている。
当然、各拠点で業務を遂行するうえでは、ネットワーク回線の障害は致命的なトラブルにつながる。企業ユーザーは、こうした点についてどう考え、備えているか。今回の調査では、ネットワークインフラのバックアップ体制について尋ねた。
その結果、主要拠点を結ぶ回線では、50.3%のユーザーが何らかの冗長化対策を取っていることが分かった。広い地域に分散し、数が多い中小拠点でも4分の1近くの24.3%が、バックアップ手段を講じている(図1)。
バックアップに使う回線種別では、インターネットVPNを使う企業が2割強でトップとなった。次いでアクセス回線のみの冗長化が約2割。固定費を抑えられるISDNのダイアルアップも依然、根強く残っている(図2)。
地域を問わず使えるインターネットVPN
インターネットVPNは、料金面もさることながら、利用可能なエリアが広いことが利点である。マブチモーターでは、国内本社のデータセンターと海外拠点間のメイン回線に国際IP-VPNを採用し、バックアップにインターネットVPNを使う構成にしている。
というのも、「アジアの地方都市などでは、企業向け回線そのものを、なかなか確保できない。xDSLなら使える地域が比較的広いこともあって、どうしてもインターネットVPNを使うケースが多くなる」(平岡副主任)からだ。
主要拠点で使っているサービス別に見ると、バックアップ回線の装備率が高いのは広域イーサネットやイーサネット専用線のユーザー(図3)。広域イーサネットユーザーの53.2%が中継網まで含めたバックアップ手段を用意している。次いで多いのはNTT東西の地域IP網を使うフレッツ・グループなどのVPNサービスのユーザーである。
一方、IP-VPNはバックアップ回線の併用率が28.2%と低い。これは、フレームリレーなどの代替として広域イーサネットより早く浸透したことが関連しているようだ。
自動車部品メーカーのウェッズでは、これまで128k~1Mビット/秒のIP-VPNで基幹系ネットを構成していた。各拠点にはもう1系統、情報系システム用のブロードバンド回線を引き込んでいたが、IP-VPN側の帯域が足りず、2回線を使った冗長構成が取れていなかった。
それを2010年に、10年ぶりにサービスを見直し、割安なイーサアクセスを導入した。星野匡彦システム部システム課課長代理は、「IP-VPNを3Mビット/秒に増強したことで、ブロードバンドと相互に切り替える冗長構成が取れた」と話す。バックアップ用の回線料金を無駄にしない工夫としては、このように通常時に2系統の回線にトラフィックを振り分けるアクティブ構成を取り入れるのも一つの手法として確立している。調査結果では、主要拠点で約44%、中小拠点でも約33%と多くの企業が採用している(図4)。