日経コンピュータとITproが共同で策定した「第1回クラウドランキング」では、クラウドベンダー143社から得たアンケート結果に基づいて、各社のクラウド関連サービスを評価した。

 「ベストサービス」に選出した18社20サービスは別掲記事で紹介した。ここではPaaSやIaaSといった「クラウド基盤サービス」を題材に、調査を通じて明らかになったクラウド関連サービスの相場を見ていこう。

 まず図1を見てほしい。クラウド基盤サービスにおける「申し込みから利用開始までの期間」の分布を示したグラフである。回答のあった54サービス中、「同日内」はわずか8サービス。「3営業日以内」の9サービスを加えても、全体の3分の1に達しなかった。

図1●クラウド基盤サービスにおける「利用開始までの期間」の相場
図1●クラウド基盤サービスにおける「利用開始までの期間」の相場

 ベンダー各社はクラウド基盤サービスを「必要なときにすぐに使い始められる」と喧伝している。だが、現実にはそこまでの柔軟性を持たないサービスが大半を占める。

 「申し込みから利用開始までの期間」を「非公開」と回答してきたのも9サービスあった。この種のサービスは導入計画を立てづらく、利用企業にとって使い勝手が良いとは言えない。

構成変更にも時間がかかる

 クラウド基盤サービスにおける「構成変更にかかる期間」の分布を見ると、理想と現実のギャップはさらに広がる(図2)。「処理量の増減に応じて仮想マシンのCPU能力やメモリー容量、ディスク容量などを簡単に増減できる」のがクラウド基盤サービスの売りのはずだが、実際にはそうしたサービスは少ない。

図2●クラウド基盤サービスにおける「構成変更にかかる期間」の相場
図2●クラウド基盤サービスにおける「構成変更にかかる期間」の相場

 54サービス中、「構成変更にかかる期間」が1時間以内だったのはわずか9サービス。「同日内」も3サービスだ。夜間バッチなどで一斉に変更するとみられる「翌営業日」の3サービスを加えても15サービスと全体の3割以下だ。残りのサービスは、期末処理などのあらかじめ予想可能な処理量の増減には対処できるが、突発的な処理量増を乗り切れない可能性がある。

 「クラウド」を名乗る最低条件の一つに、仮想化技術によってプールされたハード資源を自動的に拡張・縮退させる「プロビジョニング機能」を挙げる向きは多い。構成変更を指示してから実際に変更されるまで時間がかかるサービスは、「手動で設定を変更している」と疑われても仕方がないだろう。

 また、「構成変更にかかる期間」を非公開とするサービスも10あった。こちらも実ビジネスには使いにくい。クラウド時代を迎えて、各ベンダーの情報公開体制が問われている。

 クラウド基盤サービスが「必要がなくなったときに、すぐに利用を中止できる」わけではないことも明らかになった(図3)。54サービス中30サービスは「最低契約期間」を1カ月超に設定している。「1年超」もなんと7サービスあった。これでは通常のホスティングを大差なく、クラウドの利点を見出しにくい。

図3●クラウド基盤サービスにおける「最低契約期間」の相場
図3●クラウド基盤サービスにおける「最低契約期間」の相場