日経コンピュータとITproが共同で策定した「第1回クラウドランキング」は、イメージ調査とクラウドベンダーへのアンケート調査の二つに基づく。前者ではクラウドベンダーとしてのイメージに勝るベンダーを「ベストブランド」に選んだ。後者では七つの分野(部門)で、クラウドらしい特徴を備え、現行システムからの移行もしやすいサービスとその提供ベンダーを「ベストサービス」として認定した。

表1●第1回クラウドランキングにおけるイメージ評価の結果
表1●第1回クラウドランキングにおけるイメージ評価の結果

 このうちベストブランドを決めるイメージ調査では、グーグルとセールスフォース・ドットコムの2社が圧倒的に高い評価を獲得した(表1)。この2社だけが総合スコア100を超えた(調査方法は別掲記事を参照)。ベストブランドには総合スコア75以上の11社を選出している。

 この総合スコアは調査結果を平均点が50、標準偏差が10となるように標準化した値。学力テストなどで一般に使われる「偏差値」と同じものであることからも、グーグルとセールスフォースの突出ぶりが理解できるだろう。

 今回のクラウドランキングは1回目ということもあり、374社という非常に多くのベンダーを調査対象にした。各社のWebサイトやプレスリリース、広告、イベント出展などを参考にして、クラウド分野に名乗りを上げているベンダーはできる限り調査対象に加えた。そこには一般にはクラウドベンダーと認識されていないベンダーや無名のベンチャーも数多く含まれる。このため調査結果のバラツキが非常に大きくなり、100を超える偏差値が生まれた。

認知度が突出

 グーグルとセールスフォースの強さの秘密をもう少し探ってみよう。総合スコアを構成する(1)クラウドベンダーとしての認知度スコア、および(2)信頼性スコア、(3)技術力スコア、(4)実績スコア、(5)提案力スコア、(6)マーケティング力スコアの各イメージ項目の結果を図1に示した。

図1●グーグルとセールスフォース・ドットコムのイメージ評価の詳細
図1●グーグルとセールスフォース・ドットコムのイメージ評価の詳細
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 グーグルとセールスフォースは、クラウドベンダーとしての認知度スコアが群を抜いて高いことが一目で分かる。グーグルの認知度スコアは104.6、セールスフォースに至っては113.6を記録した。これは集計対象となった313社のうちの2位と1位。ちなみに3位はマイクロソフトで96.3、以下、富士通(93.8)、ヴイエムウェア(92.7)、日本IBM(89.7)と続く。

 イメージ調査の総合スコアは、認知度スコアに5、残り五つのイメージ項目スコアにそれぞれ1の重みを付けて加重平均した値の偏差値である。クラウドを実際に採用している企業がまだ少ない現状をかんがみて認知度を重く評価したため、認知度に勝るグーグルとセールスフォースが総合でも独走することとなった。

万人のグーグル、通のセールスフォース

 調査結果をさらに詳しく分析すると、グーグルとセールスフォースの認知のされ方が異なることも分かった。結論から言うと、グーグルは存在を広く知られているが、その代償としてサービス内容の認知は若干劣る。逆にセールスフォースは知る人ぞ知る存在だが、サービス内容の認知は進んでいる。詳しく説明しよう。

 今回のイメージ調査では、まず調査対象企業の『ITベンダーとしての認知度』を尋ねた。対象374社を15グループに分け、グループ内の25社(1グループだけ24社)について、それぞれITベンダーとして「詳細認知(詳細を知っている)」「概要認知(概要を知っている)」「事業認知(事業を行っていることは知っている)」「非認知(知らない)」を選択してもらい、その企業を何らかの形で知っていた回答者だけに、次は該当企業のクラウドベンダーとしての認知度を同様のやり方で質問して、総合スコア算出に使う認知度スコアを算出した。ITベンダーとしての認知度が90%以上だった313社を集計対象とした。

 グーグルとセールスフォースの「ITベンダーとしての認知度」および「クラウドベンダーとしての認知度」を図2に示した。マイクロソフトと富士通の結果も参考に示す。

図2●主要ベンダーの「企業認知度」と「クラウドベンダーとしての認知度」の比較
図2●主要ベンダーの「企業認知度」と「クラウドベンダーとしての認知度」の比較
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 この図を見ると、セールスフォースはITベンダーとしての認知度はそれほど高くないことが分かる。回答者の54.2%は同社をITベンダーとして「非認知」、要は企業として知らなかった。これに対してグーグルの非認知はわずか0.2%、マイクロソフトも0.7%、富士通も0.5%である。今回の調査は日経コンピュータやITproの読者/会員だけでなく、日経ビジネスオンラインをはじめとする一般ビジネスパーソンも対象に実施したため、こうした結果となった。

 ところが次の設問として、企業としてのセールスフォースの認知者に、クラウドベンダーとしての認知度を聞くと、24.0%が「詳細認知」、28.9%が「概要認知」を選択した。同社のSaaS型CRM(顧客関係管理ソフト)「Salesforce CRM」はこの種のサービスの先駆け的な存在で、テレビや一般誌でも「クラウドの代表」として頻繁に取り上げられる。このことが、高い認知につながったとみられる。

 これに対してグーグルの「詳細認知」は17.6%、「概要認知」26.4%。決して悪い数字ではないが、セールスフォースには及ばない。IaaS/SaaSから、プライベートクラウド構築支援サービスまで幅広く展開する富士通は、その間口の広さが災いしてか、「詳細認知」が10.0%、「概要認知」が19.0%にとどまった。図には示していないが、NEC、日立製作所などの大手コンピュータメーカーは富士通と同様の傾向がみられた。