「第1回クラウドランキング」の調査結果を深掘りする特集記事の2回目は、回答者の立場によるイメージ評価の変化にスポットを当てる。

 イメージ評価のアンケート回答者1万2632人のうち、IT関連ベンダー以外、すなわちユーザー企業に勤務する7194人について、所属部門別に総合スコアを算出してみた。手軽に使えるクラウド関連サービスは、システム部門ではなく、経営層・経営企画部門や利用部門が導入の主導権を握るケースが増えると考えたからだ。

 マイクロソフト、セールスフォース・ドットコム、富士通、アマゾン・ドット・コムの4社について、所属部門別の総合スコアを図1に示す。マイクロソフトと富士通の2社は所属部門による差はほとんどない。これに対して、セールスフォースとアマゾンの2社はシステム部門のイメージ評価が高い割りには、利用部門や経営層・経営企画部門のイメージ評価が低いことが分かる。

図1●ユーザー企業所属者の部門別に集計したクラウドベンダーのイメージ評価結果
図1●ユーザー企業所属者の部門別に集計したクラウドベンダーのイメージ評価結果

 セールスフォースはシステム部門に限った総合スコアが103.0だったのに対して、利用部門は92.8、経営層・経営企画部門は75.1と大きく落ち込んだ。アマゾンもシステム部門のイメージ評価は77.2だったが、利用部門は65.9。経営層・企画部門に至っては58.7と「平均より少し上」にとどまった。

 こうしたことからシステム部門に限ったイメージ評価では1位のセールスフォースは、経営層・経営企画部門では7位になる。システム部門では6位のアマゾンも経営層・経営企画部門に限ったランキングでは34位まで落ち込んだ。投資の最終判断を下す経営層・経営企画部門に対してアマゾンは、クラウドベンダーとしてそれほど高いイメージ評価を得ていないことになる。

新興勢力は評価にバラツキ

 イメージ評価の詳細を回答者の所属部門別に見てみると、4社の特色がよりはっきりとする(図2)。

図2●所属部門別に集計した主要ベンダーのイメージ評価結果
図2●所属部門別に集計した主要ベンダーのイメージ評価結果
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 マイクロソフトは全体としては所属部門によるイメージ評価の違いが少なかった。唯一の例外は信頼性スコア。システム部門の評価が今ひとつだった。経営層・経営企画部門に限った信頼性スコアが64.4、利用部門が66.6だったのに対して、システム部門は49.9にとどまった。信頼性スコアほどではないが、実績スコアに関しても同様の傾向がみられた。

 富士通はマイクロソフト以上に所属部門による評価の違いが少ない。国内最大のITベンダーであるだけに、各層に満遍なくイメージが浸透しているのだろう。

 これに対してセールスフォースとアマゾンは回答者の所属部門によってイメージ評価に大きな違いが出た。両社ともクラウド時代になって台頭した新興勢力であるため、イメージが固まりきっていないとみられる。

 セールスフォースは経営層・経営企画部門からのイメージ評価が相対的に芳しくなかった。例えば実績スコアを見ると、システム部門は90.5、利用部門は87.8だったの対して、経営層・経営企画部門のそれは20ポイント以上低い65.0だった。このスコア自体は決して悪いわけではない。だが、同社のもう一段の飛躍のためには経営層・経営企画部門への浸透が欠かせないことになる。

 アマゾンは経営層・経営企画部門にあまり認知されていなかった。システム部門からの認知度スコアが75.1だったのに対して、経営層・経営企画部門は55.3だった。

 次回からは「第1回クラウドランキング」の調査を通じて浮き彫りになったサービス品質の相場を紹介する。