企業のマーケティングにおけるソーシャルメディアの重要性が高まりつつある。2010年上期には、「ソーシャルメディア活用術」をテーマにしたマーケッター向けのセミナーや、成功事例の紹介に触れる機会も大いに増えた。しかし、そもそもソーシャルメディアをどういったユーザーがどのように使っているのかのデータは、意外なほど少ない。戦況分析なくして戦術を語るようなものである。

 そこで日経BPコンサルティングは、2010年6月にソーシャルメディアの利用経験がある18歳~69歳の男女を対象に、「ソーシャルメディア利用実態調査」を実施し、その報告書を発行した。

 この調査では、(1)ユーザーのオンライン上での行動と、参加するソーシャルメディアの関係、(2)日常的な意識と参加するソーシャルメディアの関係を調べ、さらに性別・年齢層別といった属性を合わせて分析することで、企業がソーシャルメディアをマーケティングに活用するためのヒントを得ることを目的とした。調査対象のソーシャルメディアは、SNS(Social Networking Service)、CGM(Consumer Generated Media)サイト、Q&Aサイト、動画共有サイト、掲示板サイトなど国内外29のソーシャルメディア・プラットフォームである。

 分析にあたり、二つの軸を用いた独自のモデルを開発した。ユーザーのオンライン上での行動をソーシャルメディアへの関与度によってカテゴリ分類した「オンライン行動属性」と、普段の意識や考え方によって分類した「心理クラスター」である。いずれも、米Forrester Research社や米Altimeter Group社が提唱しているモデルを参考とし、国内の実態に合うように独自に開発したものだ。

ユーザーが「どこで」「何を」しているのかを解明する「オンライン行動属性」

 一つめの分析軸である「オンライン行動属性」とは、ユーザーがどの程度ソーシャルメディア全般を使いこなしているのか、その参加度に応じて五つのカテゴリに分類したものである。

 インターネット上での行為(パソコン・携帯)を23項目選び、一つでも該当した場合は、図1-1の中央にあるカテゴリに分類した。カテゴリは、関与度の高いものから「コーディネイター」「クリエイター」「参加者」「観察者」「不参加」と名付けた。一人のユーザーが「コーディネイター」かつ「参加者」であるなど、「不参加」以外の属性のユーザーは複数に分類されることもある。

図1-1●オンライン行動属性のカテゴリ分類と回答率(回答者全体)
図1-1●オンライン行動属性のカテゴリ分類と回答率(回答者全体)
「インターネット(携帯・パソコン)で月1回以上行なうこと」の各項目に一つ以上該当した場合、右側のカテゴリに分類される。
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 図1-1の右側のグラフは、項目ごとの回答者全体に対する該当ユーザーの比率である。「観察者」では、「他人のブログ記事を読む」など回答者の半数近くに上るものもあるが、「コーディネイター」は全項目が1%台であるなど、割合はまちまちだ。

 ソーシャルメディアでマーケティングを実施するには、まず、ターゲットとするユーザーが、オンライン上でどのような行動を取っているのかを把握する必要がある。同時に、どのプラットフォームが自分たちのマーケティング施策を実施するのに適した場所であるのかを見極めなければならない。

 図1-2は、このユーザー分類別に各プラットフォームの利用比率を示したものだ。例えばTwitterで「コーディネイター」が25.4%というのは、「コーディネイター」という属性を持つ回答者の中で25.4%がTwitterを使っているという意味である。ソーシャルメディアへの関与度が高い「コーディネイター」は、ニコニコ動画、2ちゃんねる、Twitterなどの利用比率が高く、コンテンツの作り手である「クリエイター」は、mixi、Amebaをよく利用している。価格.comのように、ソーシャルメディアに関与しない「不参加」のユーザーの利用比率が高いプラットフォームも見られた。

図1-2●「オンライン行動属性」分類別の利用プラットフォーム
図1-2●「オンライン行動属性」分類別の利用プラットフォーム
グラフの中の値は最大値。代表的なもののみ記載した。
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