図1●ソフトウエア業におけるOSS関連事業の売上高および案件数の推移(第3回オープンソースソフトウェア活用ビジネス実態調査より引用)
図1●ソフトウエア業におけるOSS関連事業の売上高および案件数の推移(第3回オープンソースソフトウェア活用ビジネス実態調査より引用)
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図2●成長度の高いOSSの期待成長倍率の分布(第3回オープンソースソフトウェア活用ビジネス実態調査より引用)
図2●成長度の高いOSSの期待成長倍率の分布(第3回オープンソースソフトウェア活用ビジネス実態調査より引用)
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 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)オープンソフトウェア・センターは2010年4月30日、「第3回オープンソースソフトウェア活用ビジネス実態調査」を公開した。「顧客の低コスト志向により、OSS(オープンソースソフトウエア)活用ビジネスは、不況の中で伸びている貴重なビジネスドメインになっている」としている。

 同調査は2009年の7月から8月にかけ国内IT関連企業に対し行なったもので、調査票を3000社に発送、916社が回答した。2007年度に第1回調査を行っており、今回公開された2009年度調査が第3回となる。

 調査によれば、IT事業全体の売上高は減少傾向の企業が多い中で、OSS関連事業は2008年度調査に比べて売上、案件数ともに伸びている(図1)。その理由として「顧客の低コスト志向にOSSが応えていることが大きい」と分析している。特にWeb系のシステムが拡大しており、OSSを積極的に利用している企業では「OSSのWebサーバーを使用したWebサイト構築・運用」の引き合いが6割以上の企業で増加している。

 利用しているOSSとしては、OpenOffice.org、Ruby、Ruby on Rails、Xen、Python、Ubuntu、Linux、NetBeans、Seasar2、OpenSolarisが「着実に利用が拡大している定番」となっている。「今後利用する」という回答の多かった「OSS利用の新たな拡大領域」として、クラウド、携帯電話、データベースクラスタ、CMS(コンテンツ管理システム)への期待が大きい(図2)。4割以上の企業が、クラウドコンピューティングの普及がOSSの利用促進につながると考えている。

 ソリューション別の利用状況では、サーバー構築に関しては70%近い企業がOSSを利用している。また、ミドルウエア導入、Webサイト(情報発信)、ネットワーク構築といったインフラソリューションでも、いずれも50%以上の企業がOSSを利用している。今後の利用拡大が見込まれるのは、運用・保守、情報提供、管理など。管理系ソリューションや経営情報管理・分析、引合・営業、物流では「現在利用している」は10%未満と少ないが、「今後利用する」は15%以上で、今後利用が進むと見ている。

 OSS活用ビジネスの市場規模として、2008年のソフトウエア業のOSS活用市場規模を約1兆2000億円と推計している。2008年の情報処理・提供サービス業のOSS活用市場規模は約4200億円、インターネット付随サービス業のOSS 活用市場規模は約4400億円と推計している。

 2008年から3年後、2011年にはソフトウエア業の市場規模は約1兆6000億円、情報処理・提供サービス業の市場規模は約5000億円、インターネット付随サービス業は約5500億円と順調に成長すると推計している。また「高度な人材の不足」や「サポートに対する不安」などOSS活用の阻害要因が解消された場合、2011年のOSS活用ビジネス市場はソフトウエア業で約2兆9000億円、情報処理・提供サービス業で1兆3000億円、インターネット付随サービス業で約5500億円と、大幅に拡大すると推計している。

 以上の調査結果を踏まえ、調査報告書では提言として「サポートの不安の克服」、「人材不足の克服」、「公共調達の活性化」、「市場の魅力を認知・理解するための施策」の必要性を訴えている。

◎関連リンク
第3回オープンソースソフトウェア活用ビジネス実態調査(2009年度調査)