NTTに限らず,通信事業者間の設備競争やサービス競争にどんな不満があるかも聞いた(図1)。44.7%のユーザーは「NTTへの規制があるにもかかわらずあまり競争が進んでいない」と回答した。「NTTに資金力や保有設備などの優位性がありすぎて,他事業者との競争が進みにくい」との回答も43.4%ある。このため,31.6%のユーザーは「FTTHや携帯電話などでNTTのシェアが高すぎるので,サービスがユーザー志向になっていない」と答えている。

図1●通信事業者の競争状況に対する不満
図1●通信事業者の競争状況に対する不満
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 総務省の2008年度の「電気通信事業分野における競争状況の評価」によると,2009年3月末時点でNTT東西のFTTHシェアは74.1%にまで上昇している。このNTT東西のFTTHのシェアの高さをどう考えるかという設問に対しては,51.6%のユーザーが「シェアが高すぎると考えられ問題だ」と回答した(図2)。

図2●NTT東西のFTTHのシェアの高さに関する考え
図2●NTT東西のFTTHのシェアの高さに関する考え
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 もっとも,「ブロードバンドはほかにADSLやCATVなどがありFTTHだけのシェアはあまり意味がない」とする回答も27.9%あった。これは,NTT自身がFTTHのシェアの高さについて問われたときに回答する見解でもある。この見解に賛同するユーザー企業も,3割近くあることが分かった。

他事業者のFTTHにも期待

 NTT東西のFTTHが強すぎることで競合事業者によるFTTH敷設が進まないと,ユーザー企業のネットワーク構築ではバックアップ回線の確保に困るようになる可能性がある。NTT東西のアクセス回線しか選択肢がないと,震災などによる障害発生時に通信が途絶してしまう危険が生じる。バックアップ回線としては,NTT東西とは異なったルートを持つ別事業者のアクセス回線を引き込むことが望ましい。

 この点について聞くと,やはり多くのユーザーはNTT以外の事業者に期待していることが分かった(図3)。「NTT以外に地域通信事業者やCATV事業者などがFTTH回線を敷設すべき」との回答が40.3%を占める。

図3●望ましいバックアップ回線の形
図3●望ましいバックアップ回線の形
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 しかし一方で,「NTTのFTTH回線を完全にアンバンドルして他事業者が利用できるようにしておけば良い」との回答も33.3%あった。これは,物理回線を2重化してまでバックアップ回線を確保する必要はないとの考え方を示す。複数事業者が競ってFTTHを敷設することは無駄な投資とする意見もある。NTTのFTTHを他事業者にも平等な条件で開放すれば,異なる事業者によるサービスの2重化は実現できる。

 また,「今後,高速化が進む無線回線があるためFTTH回線を敷設するのはNTTだけで良い」との回答も16.5%あった。最近は,特に小規模拠点などでバックアップ回線にHSDPA(high speed downlink packet access)方式などのモバイル・データ通信を使う例も出てきている。2010年にはさらに高速なLTE(long term evolution)方式のサービスも登場する。今のところは少数意見だが,今後はこうした意見も増えてくるだろう。

社員の意識改革を望む声も

 今回の調査では,NTTグループの組織体制についての自由記入欄を設けた。そこには様々な“ユーザーの本音”が記されていたが,中でも目立っていたのが仕事の進め方や企業体質に関する不満だ(図4)。特に,「とにかくお役所的な対応はやめてほしい」,「NTTの官僚体質が変わらない。もっとユーザー視点でサービスを提供すべき」など,昔ながらの仕事のやり方が抜け切れていないとする意見が相次いだ。

図4●NTTに関するその他の意見
図4●NTTに関するその他の意見
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 1985年の民営化から既に四半世紀が経過しており,電電公社時代を知らない社員も多い。しかし企業の体質を変えることはなかなか難しいのか。また,日本を代表する巨大企業グループだからこそNTTに向けられる視線がおのずと厳しいものになるといった側面もあるだろう。