前回,ユーザー企業には,NTTグループに対して「東日本と西日本で組織が別で,通信サービスも東西で分断されていて使いにくい」,「類似の通信サービスが,NTT東西で名称や仕様が異なる場合があり分かりにくい」,「トラブル時などの対応窓口がどこにあるのか分かりにくい」,「通信サービスの料金が他社に比べて高い」,「NTT東西に規制があるため通信サービスを利用しにくい」といった不満があることが分かった。

 さらに,NTT東西に不満を持つと回答したユーザーには,どのようなときにNTT東西が分かれていることで「使いにくい」,「分かりにくい」,「不便」などと感じたかの具体例を聞いた。すると主要な回答は大きく「請求書を一本化できない」,「窓口がバラバラ」,「東西間をまたぐサービスが高い,一方にサービスがない」に分類できた(図1)。

図1●NTT東西が分かれていることについての具体的な不満点
図1●NTT東西が分かれていることについての具体的な不満点
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西の障害状況が東から把握できず

 このうち,「請求書を一本化できない」と「窓口がバラバラ」は,問題の根が同じと言える。主要拠点がある地域を管轄していない方の地域会社のサポート体制が不十分なことに不満があるというものだからだ。

 例えば,本社が西日本にある企業は「請求書を一括にしてほしいという要望に対して,NTT西日本は対応できるがNTT東日本の分はバラバラに届く」ことを不満点に挙げた。逆に,東日本に本社を置くある会社は,「西日本で障害が発生したときに,障害内容を直接問い合わせられず障害対応が遅れたことが何度かあった」と回答している。

 NTTグループは,大企業向けを中心とした法人営業をNTTコミュニケーションズ(NTTコム)に集約し,NTTコムがNTT東西のサービスを含めて法人向けにワンストップでサービスを提供する体制を整えている。しかしNTTコムの営業対象になっていない企業も少なくない。そうした企業は,依然として東西分断のままでサービスを使いにくいと感じているわけだ。

NTTは現状でも1社でも変わらない

 そもそも1999年に旧NTTを現在のNTT持ち株会社,NTT東日本,NTT西日本,NTTコムに再編したのは,他事業者との競争条件を整備することが目的だった。それを1社体制に戻すとなると,NTTの独占性が高まり,料金が高止まりしたり,ユーザー本位のサービスが提供されなくなるといった事態に陥る可能性がある。

 そこで,最初の質問で「1社体制のNTTに戻す」と回答した企業には,こうした懸念に対してどう考えるかを聞いた(図2)。その結果,多くの企業は「1社体制でも競争状況に変わりはない」との認識を示した。

図2●NTTの独占性が高まる恐れについての考え
図2●NTTの独占性が高まる恐れについての考え
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 その背景には,持ち株会社を中心としたグループ一体経営の現状では,「ユーザーの意識上では,今でもNTTは1社としてとらえられている」ことがある。このため,組織を1社体制に戻したとしても何も変わらないという意見だ。そして,「既にユーザー本位のサービスを提供していない」のであれば,いっそのこと名実ともに1社に戻した方がマシということであろう。

 その一方で,「NTT東西の足回り回線を他事業者に開放するなどの施策は必要」,「NTTのインフラを他の通信事業者にもっと開放すべき」とした意見も少なくなかった。ユーザーはNTTグループの組織体制よりも,通信事業者間で有効な競争が生み出されていない現状の方を問題視している。