「シリコンバレーは、その活力が停滞し、競争力を失いつつある。この地域は今、危機的状況にある」---。こうした調査報告をシリコンバレーの非営利団体Joint Venture: Silicon Valley NetworkとSilicon Valley Community Foundationが米国時間2010年2月11日に発表した。

 報告書によると、中国やインドの急速な経済成長やカリフォルニア州政府の失策が、投資活力を徐々に失わせ、シリコンバレーの回復を不透明なものにしているという。「イノベーションが原動力となって過去60年にわたり地域の繁栄をもたらしてきた。しかし世界大恐慌以来の景気低迷を迎え、この地域は不確実という新たな時代に突入した。優秀な人材を魅了し、イノベーションに投資し、適切な生活の質を保つといった状況はもはや保証されなくなった」と述べている。

 中でもベンチャー・キャピタルの投資対象は、ソフトウエアや半導体の分野から、バイオ技術やエネルギー、医療機器、メディアへと移行しつつあり、また投資水準の減少も続いている。ベンチャー・キャピタルは過去10年間大きな利益を得ていないという。

 外国人の人材については、同時多発テロ以降の米国の政策や、インドや中国の急成長が、シリコンバレーへの人材流入を阻害しているという。2008年11月から2009年11月までの期間、サンタクララとサンマテオの雇用は6.1%減少しており、米国全体の雇用減少率3.8%より悪化している。また2008年第2四半期から2009年にかけてシリコンバレーは9万人の人材を失っており、現在は2005年の水準にまで落ち込んでいる。カリフォルニア州政府の財政危機と政策の行き詰まりも、雇用機会、インフラ、生活の質、人材確保の競争といった面で悪影響を及ぼしているという。

 「明らかに、今は安閑としている時ではない。これまでの前提を越えた発想、異なる組織作り、いっそうの創意工夫、新たな協力体制の構築が求められている。これらマイナス要因は、シリコンバレーの全盛時代が終わったことを意味するわけではないが、この地域が潜在的に危険な状態にあることを示唆している」と報告書は締めくくっている。

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