モバイル・クラウドで,最も注目するサービスとして選ばれた「メール,グループウエア提供サービス」(前回記事を参照)。実際どの程度の企業が利用したい,導入したいと考えているのか。日経BPコンサルティングが調査分析を行った「携帯電話“法人利用”実態調査2010」では,携帯電話/PHSを使ったモバイル・データ通信で,社員が利用している(利用予定の)業務システム/アプリケーション15種類に関して,その実態を探るとともに将来を予測した。

会社のメール・サーバーへのブラウザ・アクセスが中心に

 業務における利用アプリケーションとしては,モバイル・クラウドで最も注目するサービスの一つである「仕事のメール送受信(会社のメール・サーバーへのブラウザからのアクセス)」が56.7%という結果だった(図1)。今回,調査に回答した上場・優良企業の半数以上が,既にモバイル・アクセスにより利用している。将来には6割以上の上場・優良企業が導入する予測だ。セキュリティ面から,今後はWebメールなどによるブラウザによるアクセスが中心になってくると想定され,モバイル・クラウド・サービスとして拡大するといえる。

図1●モバイル・データ通信で業務に利用するアプリケーション(現状で利用が多いアプリ)
図1●モバイル・データ通信で業務に利用するアプリケーション(現状で利用が多いアプリ)
業務での利用アプリケーションは,「仕事のメール送受信」が最も多い。セキュリティ面から,今後はWebメールなどによるブラウザによるアクセスが中心になってくると想定される。各通信事業者やソフトウエア・ベンダーから携帯電話で利用できるグループウエアが提供され,またSaaS型のサービスも多くなってきたことにより,今後,モバイルを利用したグループウエアがさらに拡大すると考えられる。
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将来は半数の企業がグループウエアにモバイルでアクセス

 メールに次いでモバイル・アクセス利用の高いサービスが,グループウエアである。グループウエアもモバイル・クラウドで最も注目されるサービスの一つだ。現在,36.5%の上場・優良企業がグループウエアのモバイル利用を実施中。将来は,47.4%の上場・優良企業が利用する意向だ。各通信事業者やソフトウエア・ベンダーから携帯電話で利用できるグループウェアが提供され,またSaaS(software as a service)型のサービスも多くなってきたことで,今後モバイルを利用したグループウエアはさらに拡大するだろう。

採用企業が1割に満たないアプリも将来は2~3倍に拡大

 「経理関連アプリケーション(交通費精算など)」は,前回調査では6%程度の企業が利用していたが,今回は13.3%と2倍以上に拡大した。また,将来的には4分の1の上場・優良企業が利用するアプリケーションに成長する可能性がある。最近では,最も成長しているアプリケーションだ(図2)。「社員管理」アプリケーションも,将来は約2割の上場・優良企業が利用する可能性があり,「経理」アプリに次ぐ成長株といえる。現状では採用している企業が1割に満たないアプリケーションに関しても,将来的には2~3倍の利用拡大が見込め,モバイル・クラウド・サービスとしても大いに期待できるところだ。

図2●モバイル・データ通信で業務に利用するアプリケーション(現状では利用が少ないアプリ)
図2●モバイル・データ通信で業務に利用するアプリケーション(現状では利用が少ないアプリ)
現在採用している企業が1割に満たないアプリケーションに関しても,将来的に2倍から3倍の利用の拡大が見込める。「経理関連アプリケーション(交通費精算など)」は,将来的には4分の1の上場・優良企業が利用するアプリケーションに成長する可能性がある。
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調査概要
調査名携帯電話“法人利用”実態調査2010
調査内容:携帯電話/PHSの法人利用の実態と,今後3年間の企業の導入計画,さらに経年での比較を含めた法人利用・ニーズの変化を分析。音声通信とデータ通信の両面で調査した。全38問
調査対象:[郵送調査]帝国データバンクの企業データベースに基づく上場企業と非上場の優良企業,合計5000社/[ヒアリング調査]通信事業者5社(NTTドコモ,KDDI,ソフトバンクモバイル,イー・モバイル,ウィルコム)
調査方法:ヒアリング調査と郵送調査
調査期間:2009年10月26日~12月10日
郵送調査回収数:679社
調査の実施および集計日経BPコンサルティング