データ通信が高速化することによって,企業が注目する機能・サービスの一つとして「映像・画像」系サービスがある。セキュリティ機能/サービスに次いで注目を浴びる「映像・画像」系サービスはどのようなものなのか。日経BPコンサルティングが実施した「携帯電話“法人利用”実態調査2010」では,注目される機能/サービスについても調査分析を行った。

セキュリティに次いで利用意向が高い「映像・画像」

 第1回の記事で紹介したように,2010年の投資注力度(対2009年)が最も高かったのは「モバイル・セキュリティ」だった。それを裏付けるように,注目される機能/サービスでも「セキュリティ機能」が利用意向としても最も高く,今後企業での利用が最も拡大する機能/サービスとなっている。

 この結果は,この法人利用実態調査を開始した5年前から変わっていない。将来は上場・優良企業の68.6%がモバイル・セキュリティに対応していることが予想される(図1)。企業における情報管理の観点からも,まず情報セキュリティが最重要課題となっているようだ。

図1●携帯電話の新機能/サービス普及率予測
図1●携帯電話の新機能/サービス普及率予測
「セキュリティ機能」は,将来,約7割の上場・優良企業が利用する可能性がある。「セキュリティ」に次ぐのが「映像・画像」系の機能・サービス利用。将来は約3割の上場・優良企業が利用すると想定される。
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 「セキュリティ機能」に次いで利用/利用意向が高いのは,「映像・画像」系の機能・サービスである。将来は,上場・優良企業の31.5%が利用する可能性がある。利用意向が高い理由として,携帯電話のカメラ,モバイルカメラなどを利用したアプリケーション,ソリューションが多い点もあげられるが,防犯,災害監視面での利用が高まっていることも挙げられる。

モバイル・クラウドのカギとなる「映像・画像」系機能

 注目される機能/サービスに「映像・画像」を選んだ企業には,さらに具体的に映像・画像を使った各種機能・アプリケーションの利用/利用意向を聞いた。その結果,最も多かったのが「作業/業務/進捗管理」で,マルチプルアンサーで54.7%の企業が選択している(図2)。シングルアンサーでも36.4%と高い選択率であり,工場や作業現場などでの管理におけるニーズが高まっていることを示す。特に土木・建築における作業管理,工程管理は写真が必須となってきている。作業管理・工程管理のシステムもクラウド化が進んでおり,現場での活用を中心としたモバイル・クラウド・サービスとして今後注目のカテゴリだ。

図2●映像・画像を使った各種機能・アプリケーションの利用/利用意向
図2●映像・画像を使った各種機能・アプリケーションの利用/利用意向
「映像・画像」系機能/サービスの利用/利用意向企業(図1を参照)だけに聞いた。映像・画像系の機能・アプリケーションで最も多い用途は,「作業/業務/進捗管理」で54.7%(マルチプルアンサーの場合)。TV電話会議のニーズも高く41.6%(同)が選択した。
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 TV電話会議のニーズも高い。マルチプルアンサーで41.6%の該当企業が選択している。調査回答企業の4分の1がクラウド・コンピューティングで注目のサービスに選んでいた「ユニファイド・コミュニケーション」(第2回の記事を参照)では,TV電話会議機能は重要な要素である。

 今後,データ通信の高速化により,モバイルによるTV電話会議は注目を浴びることになるだろう。WiMAX,LTE(long term evolution),XGP(次世代PHS)など,2010年は高速データ通信の飛躍の年である。そのアプリケーションの中心が映像になってくることからも,TV電話会議をはじめとした映像ソリューションのニーズはさらに高まってくると予想される。


調査概要
調査名携帯電話“法人利用”実態調査2010
調査内容:携帯電話/PHSの法人利用の実態と,今後3年間の企業の導入計画,さらに経年での比較を含めた法人利用・ニーズの変化を分析。音声通信とデータ通信の両面で調査した。全38問
調査対象:[郵送調査]帝国データバンクの企業データベースに基づく上場企業と非上場の優良企業,合計5000社/[ヒアリング調査]通信事業者5社(NTTドコモ,KDDI,ソフトバンクモバイル,イー・モバイル,ウィルコム)
調査方法:ヒアリング調査と郵送調査
調査期間:2009年10月26日~12月10日
郵送調査回収数:679社
調査の実施および集計日経BPコンサルティング