調査内容 2009年度IT予算の分野別前年同期比増減率、分野別予算額
調査時期 2009年12月中旬
調査対象 ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者
有効回答 2737件(954件)
( )内は情報システム担当者の有効回答数


 日経マーケット・アクセスが企業の情報システム担当者を対象に、3カ月ごとに実施している調査の2009年12月版で、2009年度(2009年4月~2010年3月)のIT予算を23の分野に分けて聞いたところ、予算増減率(前年度比)の平均値は「運用・危機対策系」の-14.2%から、業務アプリケーションの「経営戦略系」の-40.4%までとなった(図1)。このうち2分野は今回の調査では回答数30未満のため参考値である。平均の算出方法は下の「調査概要」参照。

図1●本年度(2009年4月~2010年3月)IT予算の分野別前年度比増減率(回答者が執行・承認権限を持つ範囲)
図1●本年度(2009年4月~2010年3月)IT予算の分野別前年度比増減率(回答者が執行・承認権限を持つ範囲)
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図2●本年度(2009年4月~2010年3月)の分野別IT投資予算額(回答者が予算執行・承認権限を持つ範囲)
図2●本年度(2009年4月~2010年3月)の分野別IT投資予算額(回答者が予算執行・承認権限を持つ範囲)
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 前回2009年9月調査での-12.7%(「仮想化基盤、OSの購入」)~-36.9%(「生産管理」)と比較すると、小幅だが前年度比の予算減少率が拡大する方向にシフトしたが、21分野中14分野が-15%~-25%の範囲に集中している。

 前回調査と比較可能な21分野のうち、予算減少率が拡大したのは8分野で、3ポイント以上拡大したのは5分野(「物流」「経営戦略系」「アプリケーション(システム)間連携基盤系」「ストレージ系」「仮想化基盤、OSの購入」)。逆に予算減少率が前回調査より3ポイント以上縮小したのは7分野(「CRM・顧客関連」「生産管理」「運用・危機対策系」「情報系」「エンタープライズ・アーキテクチャー」「運用・保守開発」「ソフトウエア購入」)である。

 2009年度予算の総計の前年度比増減率(2月2日付記事参照)は今回の2009年12月調査では平均-19.6%(前回2009年9月調査では同-25.0%)だったが、21分野のうちこの平均値とプラスマイナス3ポイント以内が9分野。その他の12分野のうち10分野は平均値の-19.6%より減少率が大きい。

 前回調査では22分野中12分野が平均値とプラスマイナス3ポイント以内で、残り10分野の半数の5分野は平均値より減少率が小さかった。前回調査と比較すると、2009年度予算は「全体として」は3カ月前よりも前年比の削減率が小幅になっているものの、「個々の分野で見ると」3カ月前より投資意欲が強まった分野の数を、弱まった分野の数が若干上回る。IT投資意欲の回復状況はまだら模様だ。

システム投資全体と比べ削減率が低いのは「危機対策」「SFA」「CRM」

 各分野の2009年度予算の前年度比増減率を見ると、回答数不足のため参考値扱いの2分野を除く21分野のうち、-10%~-20%の範囲にある(相対的に投資意欲が高めの)分野は、インフラ系が前述の「運用・危機対策系」(-14.2%)、業務アプリケーションで「SFA・営業系」(-14.9%)、「CRM・顧客関連」(-18.4%)の2分野。

 「仮想化基盤、OSの購入」は2009年6月調査での23分野中最大(-38.9%)から前回2009年9月調査で-12.7%と全分野中最小の減少率に転じ、今回は若干揺り戻して-18.4%(21分野中同率3位)。さらに「運用・保守開発」が「予算総計」の前年度比平均増減率と同じ-19.6%である。

平均予算額はほとんどの分野が3カ月前調査と横ばいか増額

 同じ23分野について2009年度予算額を聞いた結果の平均(図2)では、対象の20分野のうち18分野が前回2009年9月調査に比べて平均額がアップした(このうち3分野は今回の調査では回答数30未満のため参考値。算出方法は下の「調査概要」参照)

 特に大きいのは業務アプリケーションの分野に集中しており、「SFA・営業系」の約3760万円増(前回約2160万円→今回約5910万円、約2.7倍増)、「CRM・顧客関連」の約2450万円増(前回約1180万円→今回約3630万円、約3.1倍増)、「人事・給与」の約1900万円増(前回約640万円→今回約2540万円、約4.0倍増)。インフラ系では「運用・危機対策系」の約3660万円増(前回約1510万円→今回約5160万円、約3.4倍増)が突出しており、「アプリケーション(システム)間連携基盤系」の約1690万円増(前回約1940万円→今回約3640万円、約1.9倍増)がこれに次ぐ。

 9月調査に比べて平均予算額がダウンした2分野も、「物流」の約245万円減(前回約3110万円→今回約2870万円、約8%減)と「セキュリティー」の約320万円減(前回約2000万円→今回約1680万円、約16%減)で、比較的小幅だった。9月調査では6月調査に比べて6分野が1000万円以上ダウンし、1000万円以上のアップは「新規システム開発」の1分野だけだった。

■調査概要
 日経マーケット・アクセスが、ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者のうち、何らかの予算執行・承認権限を持つ人を対象に、執行・承認の権限を持つシステム分野の2009年度予算と前年度比増減率を聞いた。新規購入や開発中の案件がなく、2009年度のIT関連支出が継続運用費やリース料の支払い、減価償却費のみの場合、それらの2009年度分の総計額が属する範囲を選ぶよう求めた。外注の開発・運用要員の人件費は含めるが、自社内の開発・運用要員の人件費は含めない。
 本文中の「IT予算の前年同期比の平均」は、選択式回答(最も近いものを一つ選択)の「完全に削減」を-100%、「前年度の50%未満にまで削減」を-75%、「50%以上80%未満にまで削減」を-35%、「80%以上90%未満」を-15%、「90%以上110%以内」を0%、「110%超120%以内」を+15%、「120%超150%以内」を+35%、「150%超200%以内」を+75%、「200%超」を+125%、「前年度の予算はゼロ」を+200%に換算して加重平均した。
 また本文中の「平均の予算額」は、選択式回答の「2009年度はゼロ」を0、「100万円未満」を50万円、「100万円以上300万円未満」を200万円、「300万円以上1000万円未満」を650万円、「1000万円以上3000万円未満」を2000万円、「3000万円以上5000万円未満」を4000万円、「5000万円以上1億円未満」を7500万円、「1億円以上3億円未満」を2億円、「3億円以上」を4億円に換算して平均した。
 分野別のITインフラ系のうち、「情報系システム」はグループウエアや情報共有システム、「ネットワーク系システム」はWAN、LAN、電話、「インターネット系システム」は情報発信、電子商取引、マーケティング関連のシステムを指すものとして回答を求めた。「運用・危機対策系システム」はビジネス・コンティニュイティー関連のシステムも含む。目的別のうち「運用・保守開発」は信頼性向上やコスト・ダウンのための開発を含む運用・保守、ハード/ソフト別での「ソフトウエア購入」の対象範囲はアプリケーションやミドルウエアを指す、と設問に記載している。
 調査実施時期は2009年12月中旬、調査全体の有効回答は2737件、「所属する企業・組織で自社の情報システムにかかわる業務(企画立案・設計・開発・運用・予算承認など)を担当している」とした実質的な有効回答は954件。