調査内容 主要SIerに対する「利用したい理由」(その2)
調査時期 2009年9月中旬~下旬
調査対象 ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者
有効回答 3215件(1127件)
( )内は情報システム担当者の有効回答数


 日経マーケット・アクセスが企業情報システム担当者(ITpro Researchモニター登録者)を対象に行った2009年9月調査で,「今後利用したい」という回答を得たシステム・インテグレーター(SIer)に対する「利用したい理由」(最大3つまで複数回答)を分析した。今回の調査から評価対象SIerリストを大幅に見直し,コンピューター・メーカー大手を評価対象SIerに加えた(下の「■調査概要」参照)。11月6日付け記事で日本IBMと日本ヒューレット・パッカード(旧EDSジャパンを含む)の結果を紹介したが,本記事では富士通,NEC,日立製作所の国産大手メーカーの結果を報告する。

 富士通とNECは今年(2009年),国内営業体制の大規模な整理・再編を発表した。NECは「営業ビジネスユニット」(大手企業担当)と「各地域支社」(東名阪地域以外を担当),東名阪地域の中堅企業を担当する「NECネクサソリューションズ」(NEXS)に再編。富士通は大手企業を富士通本体,中堅中小企業を「富士通ビジネスシステム」(FJB)という分担に整理する。これを踏まえて今回の調査では,NECについては評価対象として「営業ビジネスユニット」と「各地域支社」を分けて提示した。本記事では以上の5社6部門のSIerとしての「利用したい理由」を比較する。

5社6部門とも最大の理由は「過去の導入/利用実績」

 11月6日付け記事で紹介した,有効票数30以上のSIer33社全体の傾向と同じく,この5社6部門のSIerでも,「利用したい理由」で最も比率が高いのは「過去の導入/利用実績」である。最大は富士通の49.5%,日立製作所も48.4%で33社の平均値39.9%より約8ポイント高い。最小はNEC(営業ビジネスユニット)の39.6%だが,FJB(41.0%),NEXS(40.5%)ともども,33社の平均値とほぼ同じ水準である。

「製品/サービスの機能」が理由として高い富士通,低いFJB

 この国産メーカー系5社6部門の「利用したい理由」の比率が最もばらけたのは「製品/サービスの機能」で,最大の富士通は33社平均(27.9%)を約10ポイント上回る37.4%(33社中5位)。最小はFJB(12.8%)で33社中32位だった。ちなみに前回2008年10月調査では,FJBに対する「利用したい理由」のうち「製品/サービスの機能」は34.1%で「過去の導入/利用実績」の36.6%に肩を並べるほど高かったが,今回は急落した(ただし前々回2008年7月調査では今回並みの14.3%)。NEXSも「製品/サービスの機能」の比率(18.9%)は33社平均を約9ポイント下回り33社中28位と低い(NEXSは前回2008年10月調査では有効票数が少なく比較対象外)。

 FJB,NEXSの両社の「利用したい理由」の比率が低めだったもう一つの項目は「ブランドや企業イメージ」。NEXS(10.8%)は33社中31位,FJB(12.8%,前回調査では14.6%)は27位。ここではNEC(各地域支社)も,33社平均の20.1%を下回る17.6%だった。

 「導入後のサービス(保守,稼働継続)」は5社6部門の「利用したい理由」の比率が最も接近し,差が付かなかった(NEC(各地域支社)の21.6%~日立製作所の29.0%)。この項目は,明日11月10日付けの記事で結果を紹介するNECフィールディングと日立電子サービス(旧日立HBMを含む),それに富士通エフサス(34.3%)と富士ゼロックス(33.9%),NTT-ME(33.3%)の「利用したい理由」の比率が突出。この5社が33社平均(24.3%)を9ポイント以上上回り,6番目に高い日立製作所との間に大きな差が付いている。

「利用したい理由」として「提案力」が高率のNEXS

 同じメーカー・グループ内で「利用したい理由」の比率に差が付いた項目は,前述の「機能」での富士通とFJBの差が最も大きい。これに次いで「提案,業務分析,情報提供」(33社平均24.9%)でも,NEXSの37.8%(33社中4位)とNEC(各地域支社)の20.3%(22位)の間に大差が付いた。NEC(営業ビジネスユニット)も31.3%で,富士通,日立製作所(ともに29.0%),FJB(28.2%)を上回ったものの,NEXSを約6ポイント下回っている。

 「コスト」がSIerに対する「利用したい理由」という比率は,本記事の対象とした5社6部門のうち33社平均(16.4%)を上回ったのが富士通(18.7%)のみ。日立製作所は6.5%で33社中下から2番目。ちなみにその下は日立ソフトウェアエンジニアリング(4.9%),29位が日立情報システムズ(9.3%)。今回の調査で有効票数30以上の33社に含まれる日立系列のSIerの中で,「利用したい理由」に「コスト」を挙げた回答者の比率が最も高かったのは,23位の日立電子サービス(11.4%,前回2008年10月調査では19.5%)だった。

■調査概要
 日経マーケット・アクセスが,ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者を対象に,システム・インテグレーター(SIer)の主要企業45社(11月2日付け記事参照)について,職務(担当システム)の領域で「今後利用したい」と感じるかを聞き,「今後利用したい」とした回答者に,そのSIerを「利用したい」と感じる理由をたずねた。
 今回から評価対象SIerリストを大幅に見直し,対象の企業数を45社に絞るとともに,富士通,NEC,日立製作所,日本IBM,日本ヒューレット・パッカード(旧EDSジャパンを含む)のコンピューター・メーカー大手を加えた。富士通とNECについては,今年(2009年)夏から秋にかけて,国内営業体制の大規模な整理・再編に踏み切ったことを考慮し,NECについては「営業ビジネスユニット」(大手企業担当)と「各地域支社」(東名阪地域以外を担当。東名阪地域の中堅企業を担当する「NECネクサソリューションズ」は従来から本調査の評価対象に含まれている)に分けて評価対象とした。富士通については中堅企業担当の「富士通ビジネスシステム」(FJB)が従来から評価対象であり,大手企業担当の「富士通」を新たに評価対象に追加した。
 選択肢は「コスト」,「提案,業務分析,情報提供」,「製品/サービスの機能」,「導入後のサービス(保守,稼働継続)」,「企業規模や体制」,「ブランドや企業イメージ」,「過去の導入/利用実績」,「その他」の8つを提示。その中から,「利用したい」と感じる理由を最大3つまで選ぶよう求めた。そのSIerを「利用したい」とした回答者数(無回答者を除く。図中のn)を100%として,それぞれの理由が選ばれた比率を集計した。
 今回の調査で30人以上から『利用したい理由』の回答が得られたSIerは合計33社(11月6日付け記事の「■調査概要」参照)。評価対象企業全45社の結果は,本調査の設問の原文とともに,日経マーケット・アクセスの有償会員向けサイト「日経MA-INDEX 企業情報システム」で公開している。
 調査実施時期は2009年9月中旬~下旬,調査全体の有効回答は3215件,「所属する企業・組織で自社の情報システムにかかわる業務(企画立案・設計・開発・運用・予算承認など)を担当している」とした実質的な有効回答は1127件。

図●主なシステム・インテグレーターに対する「利用したい」理由(国産大手メーカーと中堅中小企業担当子会社)
図●主なシステム・インテグレーターに対する「利用したい」理由(国産大手メーカーと中堅中小企業担当子会社)