調査内容 主要SIerに対する「利用したい理由」(その1)
調査時期 2009年9月中旬~下旬
調査対象 ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者
有効回答 3215件(1127件)
( )内は情報システム担当者の有効回答数


 日経マーケット・アクセスが企業情報システム担当者(ITpro Researchモニター登録者)を対象に行った2009年9月調査で,「今後利用したい」という回答を得たシステム・インテグレーター(SIer)に対する「利用したい理由」(最大3つまで複数回答)を聞いた。

 本記事では今回30人以上の回答者が「利用したい理由」を1つ以上選んだSIer33社(下の「■調査概要」参照)全体の傾向と,100人以上に達した得票数上位7社のうち6社についての分析を報告する。次週11月9日公開の記事では得票数6位の富士通を含む国産大手メーカーと,その中堅中小企業担当のSI子会社合わせて5社6部門の結果を,11月10日公開の記事では回答数50以上などの主要SIer合わせて6社の結果を報告する。

SIerを選ぶ理由は「実績」がトップ,「導入後のサービス」が低下

 今回調査のSIer33社の単純平均で見ると,最も多い「利用したい理由」は今回も前回と同じ「過去の導入/利用実績」で39.9%だった(前回2008年10月調査では15社の平均で39.1%,2008年7月調査では12社の平均で41.0%,2008年4月調査では18社平均で31.9%。2009年6月調査のベンダー39社平均は41.0%)。

 次いで,今回の調査では「製品/サービスの機能」が27.9%で2番目に高かった(前回2008年10月調査は28.2%,2008年7月調査28.8%,2008年4月調査のSIer平均31.2%,2009年6月調査のベンダー平均は50.8%)。2008年10月調査では32.2%でSIerへの「利用したい理由」中2番目に高率だった「導入後のサービス(保守,稼働継続)」が,今回は24.3%に大きく低下(2008年7月調査31.8%,2008年4月調査27.9%,2009年6月調査のベンダー平均は19.1%)。「提案、業務分析、情報提供」の24.9%(2008年10月調査28.0%,2008年7月調査23.5%,2008年4月調査25.5%,2009年6月調査のベンダー平均12.3%)とほぼ横並びで3番目~4番目の理由となった。

 「ブランドや企業イメージ」は,今回のSIer平均が20.1%と微増(2008年10月調査は18.3%,2008年7月調査15.2%,2008年4月調査18.2%,2009年6月調査のベンダー平均20.2%)。「コスト」もやや増えて16.4%(2008年10月調査は12.5%,2008年7月調査13.1%,2008年4月調査11.2%,2009年6月調査のベンダー平均21.6%)。「企業規模や体制」は微減の10.1%だった(2008年10月調査は11.7%,2008年7月調査11.6%,2008年4月調査11.9%,2009年6月調査のベンダー平均12.2%)。

 ちなみに今回の調査から評価対象SIerリストを大幅に見直し,コンピューター・メーカー大手を評価対象SIerに加えている(下の「■調査概要」参照)。しかしこれらのメーカーを除いて集計しても「導入後のサービス」の平均値はほとんど変わらず(24.4%),前回2008年10月調査に比べて約8ポイント低下している。

SIerとしての日本IBMは「提案力」が理由として上昇

 今回の調査で評価対象として提示したSIerの中での「今後利用したい」得票数トップは日本IBM(11月5日付け記事参照)。SIer33社の単純平均に比べて「利用したい理由」が目立って高いのは「ブランドや企業イメージ」(平均20.1%に対し日本IBMは36.6%)と「提案,業務分析,情報提供」(平均24.9%に対し日本IBMは40.5%)である。「ブランド」「提案」ともに,今回調査の33社の「利用したい理由」の比率中2番目に高い値だった。

 興味深いことに,2009年6月調査で同じ設問と選択肢でベンダーとしての日本IBMについて聞いた「利用したい理由」と比較すると,「提案,業務分析,情報提供」はSIerとしての日本IBMの方が約15ポイントも高くなっている(「ベンダーとしての日本IBM」では26.0%)。逆にベンダーとしての日本IBMに比べてSIerとしての日本IBMの「利用したい理由」が低率なのは「企業規模や体制」(ベンダーでは25.0%,SIerでは11.5%)と「製品/サービスの機能」(同49.0%対36.6%)だった。

SIerとしての日本HPは「ベンダーとしての日本HP」と同傾向

 これに対し「今後利用したい」得票数3位の日本HPは,SIer33社の単純平均と比べた「利用したい理由」の比率の高低では「コスト」が突出しており,平均より28.1ポイント高(44.5%)。33社中のトップである。「製品/サービスの機能」も平均より16.7ポイント高(44.5%)で33社中2位。逆に低いのは「提案,業務分析,情報提供」で平均を13.1ポイント下回る11.8%で33社中31位タイだった。

 SIerとしての日本HPの「利用したい理由」の比率は,2009年6月調査でのベンダーとしての日本HPの「利用したい理由」の比率との差が小幅で,10ポイント以上の差がある項目が一つもない。これは今回追加したメーカー大手5社中,日本HPだけである。SIerとしての日本HPの「利用したい理由」の比率がベンダーとしての日本HPより最も大きいのは「コスト」で,44.5%対38.2%。最も小さいのは「製品/サービスの機能」で44.5%対50.0%だった。

大塚商会は「コスト」強し,「導入後のサービス」の比率は低下

 前回2008年10月調査まで,SIerの「今後利用したい」得票数トップだった大塚商会は今回5位,ただし今回から評価対象SIerに加わった富士通,NEC,日立製作所の国産メーカー3社を「今後利用したい」票数で上回った。SIer33社の単純平均と比較すると「コスト」(35.1%)が平均より18.7ポイント高く,33社中の2位。「過去の導入/利用実績」(47.7%)も33社平均より約8ポイント高く33社中5位である。

 前回2008年10月調査との比較では,「コスト」の比率が約11ポイントもの急上昇(前回は24.5%,2008年7月調査では27.0%),「過去の導入/利用実績」(前回40.6%)も今回47.7%に上昇し,2008年7月調査,2008年10月調査に続いて「大塚商会を利用したい理由」のトップだった。

 逆に過去2回「大塚商会を利用したい理由」のトップ3に入っていた「導入後のサービス」の比率が,前回2008年10月調査(35.8%)より約13ポイント下落(今回22.5%)し,図示した7項目の「理由」のうち5番目に下がったのも目立つ。

事務機器系3社は「コスト」でリコー,「機能」でXEROXとキヤノン

 SIerの「今後利用したい」得票数2位のリコー(リコーITソリューションズを含む),4位の富士ゼロックス,7位のキヤノン(キヤノンマーケティングジャパン、キヤノンITソリューションズを含む)は,いずれも最大の「利用したい理由」が「過去の導入/利用実績」という点は共通している。ゼロックスの50.0%はSIer33社中2番目に大きい「利用したい理由」の比率である。

 他の項目をSIer33社の単純平均と比較すると,「コスト」ではリコーが17.4ポイント高(33.9%)で33社中3位。「製品/サービスの機能」では富士ゼロックス(平均より17.9ポイント高の45.8%)が33社中トップで,キヤノンも3位(平均より11.5ポイント高の39.4%)と目立って高い。ゼロックスは「導入後のサービス」も33社中3位~4位グループ(33.9%,富士通エフサスの34.3%とほぼ横並び)で,「利用したい理由」の比率としては高めだ。

■調査概要
 日経マーケット・アクセスが,ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者を対象に,システム・インテグレーター(SIer)の主要企業45社(11月2日付け記事参照)について,職務(担当システム)の領域で「今後利用したい」と感じるかを聞き,「今後利用したい」とした回答者に,そのSIerを「利用したい」と感じる理由をたずねた。
 今回から評価対象SIerリストを大幅に見直し,対象の企業数を45社に絞るとともに,富士通,NEC,日立製作所,日本IBM,日本ヒューレット・パッカード(旧EDSジャパンを含む)のコンピューター・メーカー大手を加えた。富士通とNECについては,今年(2009年)夏から秋にかけて,国内営業体制の大規模な整理・再編に踏み切ったことを考慮し,NECについては「営業ビジネスユニット」(大手企業担当)と「各地域支社」(東名阪地域以外を担当。東名阪地域の中堅企業を担当する「NECネクサソリューションズ」は従来から本調査の評価対象に含まれている)に分けて評価対象とした。富士通については中堅企業担当の「富士通ビジネスシステム」(FJB)が従来から評価対象であり,大手企業担当の「富士通」を新たに評価対象に追加した。
 選択肢は「コスト」,「提案,業務分析,情報提供」,「製品/サービスの機能」,「導入後のサービス(保守,稼働継続)」,「企業規模や体制」,「ブランドや企業イメージ」,「過去の導入/利用実績」,「その他」の8つを提示。その中から,「利用したい」と感じる理由を最大3つまで選ぶよう求めた。そのSIerを「利用したい」とした回答者数(無回答者を除く。図中のn)を100%として,それぞれの理由が選ばれた比率を集計した。
 今回の調査で30人以上から『利用したい理由』の回答が得られたSIerは,下に図示した6社と富士通のほか,富士通ビジネスシステム,NEC(営業ビジネスユニット),NEC(各地域支社),NECネクサソリューションズ,日立製作所(以上の6社7部門の結果は11月9日公開の記事で報告する),NTTデータ,NECフィールディング,伊藤忠テクノソリューションズ,日立電子サービス(旧日立HBMを含む),IIJグループ(インターネットイニシアティブ、IIJ-Techなど),野村総合研究所(以上の6社の結果は11月10日公開の記事で報告する),それにNECソフト(各地のグループ会社を含む),日立情報システムズ,日立ソフトウェアエンジニアリング,新日鉄ソリューションズ,NTT-ME,富士通システムソリューションズ,日本ユニシス(ユニアデックス、ネットマークス、USOLグループを含む),富士通エフサス,住商情報システム,オービック,富士通エフ・アイ・ピー,東芝情報機器,富士ソフト,ダイワボウ情報システム,NTTコムウェア(各地のグループ会社を含む)の合計33社だった。評価対象企業全45社の結果は,本調査の設問の原文とともに,日経マーケット・アクセスの有償会員向けサイト「日経MA-INDEX 企業情報システム」で公開している。
 前回,SIerに対する『利用したい理由』を聞いた2008年10月調査(本記事で紹介した大塚商会の前回調査)では,30人以上から『利用したい理由』の回答が得られたSIerは15社。本記事で紹介した日本IBM,日本HPを,同じ設問と選択肢で提示し集計した,ベンダーに対する『利用したい理由』の前回2009年6月調査では,ベンダー39社が30人以上から『利用したい理由』の回答を得ていた。
 調査実施時期は2009年9月中旬~下旬,調査全体の有効回答は3215件,「所属する企業・組織で自社の情報システムにかかわる業務(企画立案・設計・開発・運用・予算承認など)を担当している」とした実質的な有効回答は1127件。

図●主なシステム・インテグレーターに対する「利用したい」理由(回答数(「利用したい」理由を一つ以上挙げたもの)上位7社,6位の富士通を除く)
図●主なシステム・インテグレーターに対する「利用したい」理由(回答数(「利用したい」理由を一つ以上挙げたもの)上位7社,6位の富士通を除く)