今回の「SaaS/ASP利用実態調査 2009-2010」で重要用途のSaaS/ASP利用事例412件について,「SaaS/ASPサービスの導入前に想定したメリット」と「導入後に感じているメリット」の分析結果を紹介する。いずれも図示した複数の選択肢から1位~3位を選んでもらう形式の設問を提示した。

コストに次ぐ導入前の期待は「短期構築」など

 まず「導入前に想定したメリット」では,最も多く1位に選ばれたのが「初期コストが安く済む」の33.0%(図-9)。2位に最も多く選ばれたのは「管理・運用費が安く済む」の27.2%で,ともにコスト削減が前面に出た選択肢だ。

図-9●SaaS/ASPサービスの採用前に想定したメリット(「最も重要な分野」と「2番目に重要な分野」の合算)(n=412,無回答を含む)
図-9●SaaS/ASPサービスの採用前に想定したメリット(「最も重要な分野」と「2番目に重要な分野」の合算)(n=412,無回答を含む)

 1位~3位に選ばれた件数の合計では,「管理・運用費が安く済む」の235票がトップで,「初期コストが安く済む」は222票,「システム部の負荷が減る」が156票,「システム構築が短期間でできる」が149票。以下はかなり離れて「いろいろな場所から使える」107票,「サーバー性能などを気にせずに構築できる」98票の順だった。

 図示していないが,1位での得票に5点,2位に3点,3位に1点を与えて点数化し,得票数で割った「評価点の平均値」では,「初期コストが安く済む」の3.93,「管理・運用費が安く済む」の3.18に次いで,「全社のシステムを共通化しやすい」が2.86(58票),「システム構築が短期間でできる」も2.76と,比較的高い平均点を得た。数はやや少ないが,SaaS/ASPの導入に際して「システム共通化」や「短期構築」のメリットを強く意識する見込み客の存在も軽視してはならないという結果だ。

導入後の実感では「利用場所の自由」の評価も上昇

 これに対し「SaaS/ASPサービスの導入後に感じているメリット」(図-10)では,最も多く1位に選ばれたのは導入前と同じ「初期コストが安く済む」。だがその比率は10ポイント以上少ない19.9%だ。2位に最も多く選ばれたのも導入前と同じ「管理・運用費が安く済む」だが,これも24.5%で導入前より約3ポイント減っている。

図-10●SaaS/ASPサービスの採用後に感じているメリット(「最も重要な分野」と「2番目に重要な分野」の合算)(n=412,無回答を含む)
図-10●SaaS/ASPサービスの採用後に感じているメリット(「最も重要な分野」と「2番目に重要な分野」の合算)(n=412,無回答を含む)

 1位~3位に選ばれた件数の合計では「管理・運用費が安く済む」の216票がトップで,以下「システム部の負荷が減る」(184票),「初期コストが安く済む」(155票),「いろいろな場所から使える」(130票),「システム構築が短期間でできる」(115票),「サーバー性能などを気にせずに構築できる」(112票)の順。採用前と比べて2位と3位,4位と5位が入れ替わった。

 「システム部の負荷が減る」と「いろいろな場所から使える」は,ユーザーがSaaS/ASPサービスを実際に使ってみると,期待以上に実感するメリットと言える。無償試用などで見込み客をつかむ際のポイントになるだろう。


※調査概要
 日経BPコンサルティングの調査モニターのうち,「所属する企業・組織で自社あるいは自部門の情報システムにかかわる仕事を担当している」とした回答者を対象に,SaaS/ASP利用の現状と計画,利用開始時期やコスト,利用開始前と開始後の期待効果と不安要因,不満点,利用開始予定時期や予定分野,期待する効果やコスト削減率などを聞いた。
 調査時期は2009年8月3日~8月20日。全回収数(1896件)のうち,SaaS/ASPを使用していると回答した339件,および使用を計画,検討,試用していると回答した359件の合計698件を有効回答とした。有効回答者の所属業種は製造業が33.8%,流通業が11.7%,サービス業(金融関連,情報処理を除く)が14.5%,政府・自治体・公共が9.2%,金融/証券/保険業が5.6%など。有効回答者の担当システムの範囲(複数回答)は全社情報システムへの関与者が83.5%,部門情報システムへの関与者が31.5%,事業所の情報システムへの関与者が28.7%,ワークグループの情報システムへの関与者が15.3%。
※参考文献
本記事は、日経マーケット・アクセスが2009年9月30日に発行した『SaaS/ASP利用実態調査2009-2010』を参考に執筆しました。詳細はこちらをご覧ください。