今回の「SaaS/ASP利用実態調査 2009-2010」で重要用途のSaaS/ASP利用事例412件について,「今後2年程度を想定して,現在使用中のSaaS/ASPサービスを使い続けるか」を聞いた(図-6)。60.0%は「今の事業者を使い続ける」と回答。「SaaS/ASPは使い続けるが,事業者は更新時期に考える」という回答も約12%を占め,SaaS/ASPユーザーのロイヤリティは比較的高いという結果だった。

図-6●現在使用中のSaaS/ASPサービスの,今後の利用継続意向(「最も重要な分野」と「2番目に重要な分野」の合算)(n=412,無回答を含む)
図-6●現在使用中のSaaS/ASPサービスの,今後の利用継続意向(「最も重要な分野」と「2番目に重要な分野」の合算)(n=412,無回答を含む)

SaaS/ASP導入後は「ネット接続」「カスタマイズ」が問題に

 412件の利用事例について,「SaaS/ASPサービスの採用後に感じている不安や問題点」を聞いた設問(提示した選択肢から1位~3位を指定)では,1位に挙げた回答者が最も多かったのが「ネットワークが使えないと業務が滞る」の14.6%,次いで「アプリケーションがカスタマイズできない」が10.7%,3番目に「一度採用すると他サービスに移行しにくい」(10.4%)が多かった(図-7)。

図-7●SaaS/ASPサービスの採用後に感じている不安や問題点(「最も重要な分野」と「2番目に重要な分野」の合算)(n=412,無回答を含む)
図-7●SaaS/ASPサービスの採用後に感じている不安や問題点(「最も重要な分野」と「2番目に重要な分野」の合算)(n=412,無回答を含む)

 同じ回答者群に聞いた「SaaS/ASPサービスの採用前に不安だった点」では「サービスの可用性が十分かどうか分からない」が14.8%で最も多く,「セキュリティ面の危険が大きい」(13.3%),「アプリケーションが使いにくい」(10.0%)がトップ3(図-8)。採用後の不安点で上位に挙がった「ネットワークが使えないと業務が滞る」を,採用前の不安点として挙げた回答者は7.0%(提示した選択肢13種中5位),「カスタマイズできない」は9.2%(同4位),「他に移行しにくい」は5.6%(同7位)だった。

図-8●SaaS/ASPサービスの採用前に不安だった点(「最も重要な分野」と「2番目に重要な分野」の合算)(n=412,無回答を含む)
図-8●SaaS/ASPサービスの採用前に不安だった点(「最も重要な分野」と「2番目に重要な分野」の合算)(n=412,無回答を含む)

導入前の不安で上位の「可用性」「セキュリティ」は半減

 「採用前の不安点」の1位~3位に選ばれた件数の合計では,「可用性」(159票),「カスタマイズ」(125票),「セキュリティ」(114票),「アプリケーションが使いにくい」(109票)までが100票以上だった。これに対して「採用後に感じる不安点」では,「ネットワークが使えないと業務が滞る」と「アプリケーションがカスタマイズできない」が126~127票でトップに並び,次いで「一度採用すると他サービスに移行しにくい」が119票。「可用性」は85票(採用前比74減),「セキュリティ」は78票(同36減)に減っている。


※調査概要
 日経BPコンサルティングの調査モニターのうち,「所属する企業・組織で自社あるいは自部門の情報システムにかかわる仕事を担当している」とした回答者を対象に,SaaS/ASP利用の現状と計画,利用開始時期やコスト,利用開始前と開始後の期待効果と不安要因,不満点,利用開始予定時期や予定分野,期待する効果やコスト削減率などを聞いた。
 調査時期は2009年8月3日~8月20日。全回収数(1896件)のうち,SaaS/ASPを使用していると回答した339件,および使用を計画,検討,試用していると回答した359件の合計698件を有効回答とした。有効回答者の所属業種は製造業が33.8%,流通業が11.7%,サービス業(金融関連,情報処理を除く)が14.5%,政府・自治体・公共が9.2%,金融/証券/保険業が5.6%など。有効回答者の担当システムの範囲(複数回答)は全社情報システムへの関与者が83.5%,部門情報システムへの関与者が31.5%,事業所の情報システムへの関与者が28.7%,ワークグループの情報システムへの関与者が15.3%。
※参考文献
本記事は、日経マーケット・アクセスが2009年9月30日に発行した『SaaS/ASP利用実態調査2009-2010』を参考に執筆しました。詳細はこちらをご覧ください。