調査内容 2009年第3四半期のIT予算の前年同期比増減(業種別)
調査時期 2009年9月中旬~下旬
調査対象 ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者
有効回答 3215件(1127件)
( )内は情報システム担当者の有効回答数


 日経マーケット・アクセスが9月に,ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者を対象に行った調査で,2009年第3四半期(2009年7月~9月期,3Q実績)のIT予算の前年同期比増減率(全回答平均は-29.1%,10月21日付け記事参照)を製造,流通,サービスの業種別(下の「■調査概要」参照)に集計した。

 その結果,製造業は平均-39.5%で依然として大幅な投資抑制だが,流通業は同-19.1%,サービス業は同-23.6%。3業種ともに前回2009年6月調査の2009年第2四半期(2Q実績,2009年4月~6月)より削減率が縮小しており,IT投資の削減に底打ちの兆しが見られた。

 ちなみに3カ月前に実施した前回調査(全回答平均は-33.6%)での2Q実績では,製造業の前年同期比増減率が平均-44.1%,流通業は同-36.1%,サービス業は同-25.3%。今回の調査結果と比較すると,製造業は4.5ポイント,流通業は17.0ポイント,サービス業は1.8ポイント,それぞれ削減率が縮小した。ただし6カ月前の2009年3月調査での2009年第1四半期(1Q実績,2009年1月~3月,全回答平均は-25.7%)との前年同期比削減率の比較では,3業種ともほぼ同じか今回の方がまだやや大きい(製造業4.1ポイント,流通業4.9ポイント,サービス業1.0ポイント)。

 回答の内訳を見ると,3業種とも「前年同期より増加(2割以上)」側の回答の合計比率は7%弱で,1Q実績,2Q実績とあまり変化はない。「90%以上110%以内(ほぼ前年同期なみ)」の比率も前回2009年6月調査の2Q実績とほぼ同じ。流通業だけは「ほぼ前年同期なみ」の回答比率が,1Q実績での57.5%から2Q実績で36.9%に大きく縮小し,今回の3Q実績でも2Q実績とほぼ同じ41.3%となった。

「完全削減」の比率が低下,サービス業は「半分以下」,流通業は「1~2割減」が増える

 「前年同期より減少(2割以上)」側の合計比率も,前回2009年6月調査の2Q実績と今回の3Q実績でさほど変動はない。しかしその内訳には大きな変化が見られる。「完全に削減(ゼロになった)」を選んだ回答者の比率が,特に流通業とサービス業で大きく減少したのだ。

 流通業では「完全に削減」の比率は1Q実績での12.5%が2Q実績で25.0%に倍増したが,今回の3Q実績で8.7%に大幅減。サービス業の「完全に削減」の比率も1Q実績17.6%,2Q実績16.5%から,3Q実績で8.4%にほぼ半減した。製造業ではこれほど劇的ではないものの,1Q実績27.5%,2Q実績23.4%,3Q実績で19.9%と「完全に削減」の比率は徐々に下がっている。

 2Q実績と比較して「完全に削減」の比率が減った分,今回比率が増えたのは,サービス業では「前年同期の50%未満にまで削減」つまり「半分以下の予算に減らした」という選択肢である。「完全に削減」の8.0ポイント減に対し,この「半分以下」が8.3ポイント増えた。一方,流通業では「完全に削減」の比率が2Q実績と3Q実績の比較で16.3ポイント減ったのに対して,「80%以上90%未満」つまり「1~2割減」が9.0ポイント増え,「50%以上80%未満」つまり「2~5割減」も4.6ポイント増えた。流通業は3業種の中では回答数が最も少なく,今回の回答全体の平均を大きく動かすには至らなかった。しかしこの流通業の動きは,2009年前半に全産業にまん延したIT投資の削減から抜け出す糸口になりそうだ。

■調査概要
 日経マーケット・アクセスが,ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者のうち,何らかの予算執行・承認権限を持つ人を対象に,執行・承認の権限を持つシステム分野の予算を聞いた。新規購入や開発中の案件がなく,四半期のIT関連支出が継続運用費やリース料の支払い,減価償却費のみの場合,それらの総計額が属する範囲を選ぶよう求めた。外注の開発・運用要員の人件費は含めるが,自社内の開発・運用要員の人件費は含めない。
 本文中の「IT予算の前年同期比の平均」は,選択式回答(最も近いものを一つ選択)の「完全に削減」を-100%,「前年同期の50%未満にまで削減」を-75%,「50%以上80%未満にまで削減」を-35%,「80%以上90%未満」を-15%,「90%以上110%以内」を0%,「110%超120%以内」を+15%,「120%超150%以内」を+35%,「150%超200%以内」を+75%,「200%超」を+125%,「前年同期の予算はゼロ」を+200%に換算して加重平均した。
 「製造業」は「機械製造」,「コンピュータ,周辺機器製造」,「その他電気・電子機器製造」,「上記3種以外の製造業」を合計した。「サービス業」は「サービス業(マスコミ,広告,デザイン,飲食店,その他)」,「専門サービス(弁護士/会計士など)」,「金融/証券/保険業」,「運輸/エネルギー」,「通信サービス」,「情報処理/ソフトウエア/SI・コンサルティング/VAR」の合計。「流通業」は「商社」,「コンピュータ関連販売」,「上記2種以外の流通/小売」の合計。なお本調査ではコンピュータ関連業種の回答者にも「自社の業務処理のためのIT投資」について回答することを求めた。
 調査実施時期は2009年9月中旬~下旬,調査全体の有効回答は3215件,「所属する企業・組織で自社の情報システムにかかわる業務(企画立案・設計・開発・運用・予算承認など)を担当している」とした実質的な有効回答は1127件。

図●最新四半期(2009年7月~9月)予算総計の前年同期比増減率(回答者が執行・承認権限を持つ予算の総額,業種別)
図●最新四半期(2009年7月~9月)予算総計の前年同期比増減率(回答者が執行・承認権限を持つ予算の総額,業種別)