前回は,移動体通信事業者の「技術力がある」「信頼できる」「安定性がある」「実績がある」という4項目の結果を報告した。今回は,同じ移動体通信事業者に対する「コスト・パフォーマンスが良い」「広告・宣伝がうまい」「営業・販売力がある」「サポート/アフター・サービスが充実」の4項目を紹介する。

 まずは「コスト・パフォーマンスが良い」(図4-1)。「そう思う」と「どちらかといえばそう思う」の合計が74.6%でトップに立ったのはソフトバンクモバイルだった。僅差の同71.4%でイー・モバイルが続く。ウィルコムは同63.1%で第3位。それから少し離されて,同45.7%のKDDIと同29.0%のNTTドコモという結果になった。前回の「技術力がある」などのイメージで1位,2位を占めたNTTドコモとKDDIが,今度は下位に沈んだ。この構図は,第2回で見た固定通信事業者と同じである。

 コスト・パフォーマンスでソフトバンクモバイルのイメージが強いのは,やはり2007年1月に始めた基本使用料月額980円の「ホワイトプラン」の影響が大きい。その後,NTTドコモやKDDIも,割引サービスを併用することで基本使用料が月額980円となる料金プランを開始しているが,シンプルなホワイトプランの印象はいまだに強烈と言えそうだ。またイー・モバイルも,下り最大3.6Mビット/秒(当時)のHSDPA方式で,パソコンでも使える月額5980円ぽっきりのデータ通信サービスを開始したインパクトが大きいのだろう。また,「100円パソコン」などのうたい文句でネットブックとのセット販売を積極的に展開していることが影響している可能性もある。

図4-1●移動体通信事業者に対するイメージ「コスト・パフォーマンスが良い」
図4-1●移動体通信事業者に対するイメージ「コスト・パフォーマンスが良い」
[画像のクリックで拡大表示]

 次は「広告・宣伝がうまい」という項目である(図4-2)。ここでは断トツでソフトバンクモバイルが第1位だ。「そう思う」と「どちらかといえばそう思う」の合計が93.9%に上る。「そう思う」だけでも55.7%。これは,移動体通信事業者に対するアンケート調査の中で,「そう思う」単独の最も高い数値である(第2位は「実績がある」のNTTドコモで55.6%)。「広告・宣伝がうまい」の第2位はNTTドコモで,「そう思う」「どちらかといえばそう思う」の合計が70.2%。第3位は同65.2%のKDDIだった。

 ソフトバンクモバイルの数値が高いのは言うまでもなく,テレビCMシリーズ「白戸(ホワイト)家」の印象が強烈なためだ。同CMは,全日本シーエム放送連盟(ACC)主催の「ACC CM FESTIVAL」で昨年,グランプリを受賞している。NTTドコモやKDDIも日々,大量の携帯電話のテレビCMを流しており約7割を獲得した。しかし,ソフトバンクモバイルにはかなり差を付けられている格好だ。

図4-2●移動体通信事業者に対するイメージ「広告・宣伝がうまい」
図4-2●移動体通信事業者に対するイメージ「広告・宣伝がうまい」
[画像のクリックで拡大表示]

 「営業・販売力がある」でも,「そう思う」「どちらかといえばそう思う」の合計が88.2%でソフトバンクモバイルがトップだった(図4-3)。同84.5%でNTTドコモがこれを追っている。ただし,「そう思う」の回答ではソフトバンクモバイルが49.8%と5割近くの数値を獲得している。ソフトバンクモバイルは2009年6月まで26カ月連続で純増数トップを維持し,7月はトップの座をNTTドコモに譲ったものの8月は再び首位に返り咲いた。こうした点に「販売力」を感じさせるのだろう。

図4-3●移動体通信事業者に対するイメージ「営業・販売力がある」
図4-3●移動体通信事業者に対するイメージ「営業・販売力がある」
[画像のクリックで拡大表示]

 最後は「サポート/アフター・サービスが充実」である(図4-4)。「そう思う」と「どちらかといえばそう思う」の合計が82.8%でトップだったのはNTTドコモ。同77.5%でKDDIが続く。ここまで3項目でトップだったソフトバンクモバイルも,ここでは同51.6%で第3位に後退した。イー・モバイルとウィルコムは,それぞれ同31.6%,37.7%にとどまった。特にイー・モバイルは,「そう思う」との回答がわずか1.6%しかない。これは,移動体通信事業者に対する調査の中で,「そう思う」単独の最も低い数値となっている。

図4-4●移動体通信事業者に対するイメージ「サポート/アフター・サービスが充実」
図4-4●移動体通信事業者に対するイメージ「サポート/アフター・サービスが充実」
[画像のクリックで拡大表示]

 ここまで全4回にわたって,固定と移動体の通信事業者のイメージについて見てきた。固定と移動体に分けて調査を実施したが,NTT,KDDI,ソフトバンクの3グループだけに着目してみると,実は各項目とも同じような傾向が見て取れる。KDDI以外は,それぞれ別会社で事業を展開しているものの,ユーザーからしてみると,NTT,KDDI,ソフトバンクの3グループとしてのイメージが定着しているようだ。「技術」「信頼」「安定性」「実績」などではNTTグループが強く,「安さ」「営業力」ではソフトバンク・グループが強い。そして,多くの項目において“2番手”のKDDIだ。固定通信でトップの項目も最下位の項目もなかったKDDIは,移動体通信でもトップ,最下位ともなかった。もちろん,今回は限られた項目でしか調査を実施しておらず,別の項目やもっと細かいイメージで設問を設ければ,また違った結果も出てくるだろう。

 今回はイメージ調査であり,場合によっては各事業者の実態とかけ離れている項目があるかもしれない。とはいえ,固定通信事業者のところでも言及したが,こうしたイメージが事業者選定に影響することは確かだ。しかも,いったんついたイメージを払拭するのは意外と難しい。もし実態と大きくかけ離れている項目があるとすれば,各事業者ともイメージ戦略の見直しが必要だろう。

調査概要
調査名:固定通信事業者と移動体通信事業者のイメージに関する調査
調査対象: 「日経コミュニケーション」読者モニター
調査方法:Webアンケート調査
調査期間:2009年6月5日~6月12日
回答企業数(回収率):245社(38.2%)
調査の実施および集計:日経BPコンサルティング
注)今回の調査はあくまでもイメージ調査であり,実際に各事業者のサービスを利用しているユーザーを対象としたものではない。このため,必ずしも各事業者の実態を表していない可能性がある。