前々回前回と,日経コミュニケーションの読者モニターが抱く固定通信事業者のイメージについての調査結果を報告した。今回からは,移動体通信事業者のイメージについて報告する。対象とした移動体通信事業者は,NTTドコモ,KDDI,ソフトバンクモバイル,イー・モバイル,ウィルコムの5社。モバイルWiMAXサービス「UQ WiMAX」を提供しているUQコミュニケーションズについては,調査時点では本サービスを開始していなかったため対象外とした。

 調査項目は,固定通信事業者と同じ全8項目。そのうち,「技術力がある」「信頼できる」「安定性がある」「実績がある」の4項目のイメージから見てみる。

 まずは「技術力がある」というイメージについて(図3-1)。「そう思う」と「どちらかといえばそう思う」の合計で91.8%を獲得したNTTドコモがトップだった。これに,同80.3%のKDDIが続く。ソフトバンクモバイル,イー・モバイル,ウィルコムは,それぞれ63.5%,58.8%,60.2%といずれも6割前後だった。NTTドコモは,2001年10月1日に世界初の第3世代携帯電話(3G)サービス「FOMA」を開始。そして2010年には,国内では他社に先駆けて第3.9世代携帯電話(3.9G)サービス「Super 3G」(LTE:long term evolution)を開始する予定だ。技術力があるとのイメージは,ある意味,当然のこととうなずける。他の4社についても,8割,6割前後と高い。やはり日本の携帯電話事業者は「高い技術力を持っている」という認識が総じて強いのだろう。

図3-1●移動体通信事業者に対するイメージ「技術力がある」
図3-1●移動体通信事業者に対するイメージ「技術力がある」
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 次に「信頼できる」(図3-2)と「安定性がある」(図3-2)を見てみる。この2項目では同じような傾向が見える。「そう思う」と「どちらかといえばそう思う」の合計値で,NTTドコモ,KDDI,ソフトバンクモバイル,ウィルコム,イー・モバイルの順番となっている。NTTドコモは「信頼できる」「安定性がある」とも9割を超えた。KDDIは両項目とも8割台で,ソフトバンクモバイルは5割前後。ウィルコムとイー・モバイルは3割~5割程度だった。

 「いつでもどこでも電話できる」のが理想の携帯電話にとって,つながりやすいという「安定性」が「信頼性」につながるのだろう。FOMAの人口カバー率100%のNTTドコモと,人口カバー率99%以上のKDDIが高い数値を示している。ソフトバンクモバイルも3Gの人口カバー率は99%以上に達しているが,実際につながる場所となると,NTTドコモやKDDIのカバー範囲よりも劣ると思われ,その影響で数値が伸び悩んだのだろう。また,開業約2年のイー・モバイルやPHSのウィルコムは,エリアの狭さが低い数値に反映したと考えられる。

図3-2●移動体通信事業者に対するイメージ「信頼できる」
図3-2●移動体通信事業者に対するイメージ「信頼できる」
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図3-3●移動体通信事業者に対するイメージ「安定性がある」
図3-3●移動体通信事業者に対するイメージ「安定性がある」
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 最後は「実績がある」というイメージだ(図3-4)。ここでもNTTドコモが,「そう思う」と「どちらかといえばそう思う」の合計で97.9%とトップだった。「そう思う」だけでも55.6%と高い数値を見せている。KDDIも「そう思う」「どちらかといえばそう思う」の合計が93.0%で9割を超えた。同69.7%のソフトバンクモバイル,同48.8%のウィルコム,同29.1%のイー・モバイルと続いている。

 これらは,各社の開業時期の差がそのまま結果に反映したと思われる。NTTがまだ電電公社の時代に自動車電話を開始したのは1979年。合併してKDDIが発足する前の日本移動通信(IDO)の開業は1988年。ソフトバンクモバイルの前身のデジタルホンの開業は1994年。ウィルコムの前身のDDIポケット電話の開業は1995年。そしてイー・モバイルの開業は2007年である。サービス開始後2年余りのイー・モバイルが実績イメージで約3割を獲得したのは,“健闘”と言えるのかもしれない。

図3-4●移動体通信事業者に対するイメージ「実績がある」
図3-4●移動体通信事業者に対するイメージ「実績がある」
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 今回の移動体通信事業者に関する「技術力がある」「信頼できる」「安定性がある」「実績がある」というイメージでは,NTTドコモ,KDDIの2社と,ソフトバンクモバイル,イー・モバイル,ウィルコムの3社で大きく分かれた。「そう思う」「どちらかといえばそう思う」の合計値は,NTTドコモがすべて9割超で,KDDIがすべて8割超。一方,3社は項目によるバラつきはあるものの,ソフトバンクモバイルの「実績」を除いて,だいたい6割以下となった。

 しかし,次回で紹介する「コスト・パフォーマンスが良い」「広告・宣伝がうまい」「営業・販売力がある」「サポート/アフター・サービスが充実」の4項目では,必ずしも“2強”とは呼べない結果が出た。

調査概要
調査名:固定通信事業者と移動体通信事業者のイメージに関する調査
調査対象: 「日経コミュニケーション」読者モニター
調査方法:Webアンケート調査
調査期間:2009年6月5日~6月12日
回答企業数(回収率):245社(38.2%)
調査の実施および集計:日経BPコンサルティング
注)今回の調査はあくまでもイメージ調査であり,実際に各事業者のサービスを利用しているユーザーを対象としたものではない。このため,必ずしも各事業者の実態を表していない可能性がある。