携帯電話の“実力”はどれほどだろうか。ここで焦点を当てる“実力”は,個人があるメディアに触れている時間,メディア接触時間である。私たちの1日は24時間に限られており,その24時間をそれぞれの情報メディアは奪い合っている。ほかの情報メディアと比較した場合,携帯電話はどれくらいの時間を占めているのだろうか。日経BPコンサルティングは「携帯電話“個人利用”実態調査」の中で,携帯電話と各種情報メディアについて,それぞれの接触時間を調べている。

携帯電話コンテンツの利用は5分以内

 情報メディアとして調査の対象としたのは,「携帯電話での通話」「固定電話での通話」をはじめとして,テレビ,新聞,ゲームなどの24の情報メディア(図1)。24項目について,「平日の1日のうちプライベートな目的で利用している時間」と「休日の1日のうちプライベートな目的で利用している時間」を尋ねた。それぞれの情報メディア別に,平日と休日の1日当たりの平均接触時間を集計した。

図1●平日と休日の各種情報メディアの接触時間<br>ネット接続・Eメールと通話を除く携帯電話コンテンツ利用のほとんどが5分以内である。
図1●平日と休日の各種情報メディアの接触時間
ネット接続・Eメールと通話を除く携帯電話コンテンツ利用のほとんどが5分以内である。
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 前回調査(2008年6月)でも同じ形式の設問で尋ねており,1年間の変化を比較することができる。ネット接続・Eメールと通話を除く携帯電話コンテンツ利用のほとんどが5分以内であることは,前回調査(2008年6月)と変わらない。一方,「PCでのインターネット接続・Eメール利用」が平日,休日ともに2時間を超えている。この理由は,調査方法がインターネットを使って回答を集めたためで,インターネット関連の時間や頻度が大きくなるのは,ネット調査モニターの特徴である。

平日の「携帯電話」と「パソコン」は増加傾向

 ここでは全体の傾向をみるために,24の情報メディアを項目別に比較するのではなく,「携帯電話」「パソコン」「テレビ」の3グループにまとめて1年間の接触時間の増減を調べた。

 「携帯電話」は,携帯電話関係の7項目をまとめた。具体的には,「携帯電話での通話」「携帯電話でのインターネット接続,Eメール」「携帯電話ワンセグTV」「携帯電話での動画」「携帯電話での電子書籍」「携帯電話でのゲーム」「携帯電話による音楽再生」である。「パソコン」は,「PCでのインターネット接続」「通信以外のPC利用」「PCでの動画」「PCでの電子書籍」の4項目,「テレビ」は,「テレビ(地上波)」「テレビ(BS・CS,CATV)」「VTR,DVD再生」の3項目をまとめた。

 平日についてみると,3グループの中で「携帯電話」と「パソコン」の接触時間が増加し,「テレビ」が減少した(図2)。「携帯電話」の平日の接触時間は,前回調査の41.7分から2.1分増えて43.8分になった。5.0%の増加である。「パソコン」は,189.7分から5.6分増えて195.3分で,3.0%増加した。一方,「テレビ」は181.0分から6.1分短くなって174.9分,3.4%の減少である。

図2●情報メディアの3グループの平日2年比較
図2●情報メディアの3グループの平日2年比較
平日は,「携帯電話」の接触時間が増加し,「テレビ」の接触時間が減少する傾向にある。

 このように平日は,「携帯電話」の接触時間が増加し,「テレビ」の接触時間が減少する傾向にあることが分かる。

休日は3グループともに接触時間が減少

 休日についてみると,3グループともに接触時間が減少した(図3)。「携帯電話」は39.2分から1.6分減少して37.6分になり,4.1%減。「パソコン」は177.6分から2.0分減少して175.6分になった。1.1%減である。「テレビ」は209.8分から4.6分も短くなって205.2分,2.2%減だった。休日の変化では,減少時間で「テレビ」が最も大きく,減少割合で「携帯電話」が最も大きかった。

図3●情報メディアの3グループの休日2年比較
図3●情報メディアの3グループの休日2年比較
休日では3グループともに接触時間が減少。減少時間では「テレビ」が最も大きく,減少割合では「携帯電話」が最も大きかった。

 2008年からの景気後退のために,個人の消費行動と時間の使い方が変化しているという見方がある。外出に時間を使う,外出してお金を使うのではなく,自宅で過ごす時間を増やす,切り詰めながらもそのためにはお金を使うという,いわゆる「すごもり消費」である。今回の調査ではメディア接触時間に大きな変化はなかったが,次の調査では「すごもり消費」の影響が表れて,メディア接触時間に変化が起こるかもしれない。

調査概要
調査名携帯電話“個人利用”実態調査2009
調査内容:携帯電話の個人利用実態とその動向を調査した。全153問
調査対象:全国の携帯電話利用者(PHSも含む)
調査方法:Webアンケート調査
調査期間:2009年6月4日(木)から8日(月)まで
回収数:11区分の年齢区分(15歳以上から5歳刻み,65歳以上は一括)に対して男女それぞれ200人ずつ,合計4400人
調査の実施および集計日経BPコンサルティング