携帯電話を介して使われるお金はどれくらいだろうか。日経BPコンサルティングは,個人がどのように携帯電話を使っているかに焦点を当てた「携帯電話“個人利用”実態調査」を2009年6月上旬に実施した。この調査は2000年から実施しており,今回が15回目。その調査結果をもとに「携帯電話を介して行われる購買」(=携帯流通マネー)についての年間総額を算出した。

“携帯流通マネー”の市場規模は1兆7000億円

 この調査では,各種コンテンツの利用料金について尋ねている。携帯電話を介したオンラインショッピング,ネットオークション,おサイフケータイを使った買い物や乗り物利用,さらに音楽,電子書籍,ゲーム,動画の各種コンテンツについて利用料金を回答してもらった。

 これらの回答をもとにして,“携帯流通マネー”についての年間総額を算出した。その結果,“携帯流通マネー”の市場規模は総額で1兆6931億円と算出できた(図1)。

図1●“携帯流通マネー”の年間総額
図1●“携帯流通マネー”の年間総額
日経BPコンサルティングが「携帯電話“個人利用”実態調査」から算出した“携帯流通マネー”の市場規模は総額1兆7000億円。

 総額の内訳をコンテンツ別にみると,「オサイフケータイでの買い物」(35.0%)と「携帯オンラインショッピング」(34.5%)の2分野が3割を超えた。次いで,「おサイフケータイでの乗り物運賃」(14.3%),「携帯ネットオークション」(8.3%),「音楽コンテンツ」(4.0%)と続き,1%台に「ゲームコンテンツ」(1.6%),「電子書籍コンテンツ」(1.2%),「動画コンテンツ」(1.1%)の3分野が並んだ。

 調査では男女合わせて4400人の回答を集めた。そのうち,各種コンテンツを有料で利用している回答者の利用金額をコンテンツごとに尋ね,性年代別に平均利用金額を集計した。さらに,総務省統計局の人口データ(平成21年1月1日現在の確定値)による性年代別人口構成比と,総務省「平成20年度通信利用動向調査」における各世代の携帯電話個人利用率をもとに換算して,“携帯流通マネー”の市場規模を算出している。

 前回調査(2008年6月)でも同様の料金を尋ねており,“携帯流通マネー”の年間総額を算出したのは今回が2回目。前回調査では年間総額は1兆7220億円だった。この2回の調査結果から,“携帯流通マネー”の市場規模は,1兆7000億円規模となっていると推測できる。

高速モバイル・ネットワークがコンテンツの流通を後押し

 「ゲームコンテンツ」,「電子書籍コンテンツ」,「動画コンテンツ」は,「携帯ネットショッピング」や「おサイフケータイでの買い物や乗り物」など,ほかのコンテンツ分野と比べると現時点での規模は小さい。これら三つのコンテンツは,高速モバイル・ネットワークの実現により今後の利用は一層拡大するだろう。

 個人消費は景気動向にも左右されるところが大きい。この先,国内の景気が回復基調となり,ほかのコンテンツ分野とも合わせて今後3年間で3000億円程度規模が増えると,“携帯流通マネー”は2012年には2兆円規模となることが見込める。

 実際,高速モバイル・ネットワークのサービス開始は,具体的な日程に上ってきている。第3.9世代(3.9G)サービスは,イー・モバイルが2010年9月に開始を予定している。次にNTTドコモが2010年12月に,ソフトバンクモバイルが2011年7月である。その後,少し期間をあけて,2012年12月にKDDI(au)が3.9Gサービスを開始する予定だ。

 さらに,高速モバイル・ネットワークと並んでコンテンツ流通の拡大を後押しするのが,多様な携帯電話の出現だ。ソフトバンクのiPhoneや,米グーグルのスマートフォンOS「Android(アンドロイド)」を搭載した携帯電話端末などである。現時点では,個人の所有率は低いが,スマートフォンの普及も今後のコンテンツ流通を広げるポイントである。

 調査結果の詳細は,報告書「携帯電話“個人利用”実態調査2009」として7月15日に発行した。今回の調査では“携帯流通マネー”市場規模だけではなく,通信事業者と端末メーカーごとの顧客満足度,月々の利用料金(通話料や有料コンテンツへの支払い額),動画/ネットショッピング/オークションの実態,メディア接触時間など,153項目についてまとめている。

調査概要
調査名携帯電話“個人利用”実態調査2009
調査内容:携帯電話の個人利用実態とその動向を調査した。全153問
調査対象:全国の携帯電話利用者(PHSも含む)
調査方法:Webアンケート調査
調査期間:2009年6月4日(木)から8日(月)まで
回収数:11区分の年齢区分(15歳以上から5歳刻み,65歳以上は一括)に対して男女それぞれ200人ずつ,合計4400人
調査の実施および集計日経BPコンサルティング