「台風一過」というべきか,「のどもと過ぎれば熱さを忘れる」というべきか。新型インフルエンザの“日本上陸騒動”から2カ月も経っていないが,もはや世間の関心は薄らぎつつあるように感じる。

 しかし,新型インフルエンザのパンデミック(世界的な大流行)にどう対処すべきなのか,多くの企業が浮き足立っていたようだ。今回の騒ぎから見えたこと,気付いたことを,今後に生かしていかなければならない。

 そこでITproの会員読者を対象にアンケート調査を実施し,新型インフルエンザ対策に関する現状と課題を探ることにした。実施期間は2009年6月10日~6月17日。2019人から回答を回収した。回答者の勤務先は,IT関連製品/サービスを利用する側(ユーザー企業)が6割,提供する側(ITベンダー)が3割ほどである。

「マスクが品切れ!」という現実に戸惑う

 日本国内で新型インフルエンザの感染が確認された時期は,世間で感染予防に関する知識が足りなかったことや過剰気味の報道もあって,かなりうわついた雰囲気だった。この点について,勤務先の雰囲気を聞いてみた結果が図1である。

図1●日本国内で新型インフルエンザの感染が確認されたころ,あなたの会社の雰囲気はどのような感じでしたか?(N=1764)
図1●日本国内で新型インフルエンザの感染が確認されたころ,あなたの会社の雰囲気はどのような感じでしたか?(N=1764)

 周囲の人が多かれ少なかれ「感染の不安を感じていた」とする回答は,合計して3割弱あった。しかし,大勢を占めるのは「比較的落ち着いていた」「いつもと変わった様子はなかった」という意見で,全体の7割に達した。多くの人や企業が比較的冷静に対処していたようだ。

 ただし,感染の不安を感じていたかどうかは,回答者の地域で新型インフルエンザの感染者数にも影響されるだろう。感染範囲が日本中に広がっていたら,また違った結果になっていたかもしれない。

 一方,回答者のコメントを見ると,「マスクが売り切れていて困った」という不安の声が非常に多かった。全体で900件近いコメントの中で,およそ3分の1がマスクに関するものだ。日常生活では,落ち着いていられないケースもあったと推察される。会社にマスクの備蓄を求める声も多かった。