米Gartnerは米国時間2009年5月7日,SaaS(Software as a Service)の世界市場について調査した結果を発表した。それによると,2009年のSaaS市場の売上高は,前年の66億ドルから21.9%増の96億ドルに達する見通し。同市場はその後も堅実な成長を続け,2013年には企業向けアプリケーション市場におけるSaaSの総売上高が160億ドルに拡大するとしている。

 同社リサーチ・ディレクタのSharon Mertz氏は,「景気低迷に起因する予算削減により,安価な代替選択肢としてSaaSを導入する企業が増え続けている」と説明する。同氏によると,セキュリティや応答時間,サービスの可用性に関する懸念の多くが解消されたことや,ビジネスおよびコンピューティング・モデルの成熟により,この5年間でSaaSの人気が急速に高まっている。

 2009年のSaaS市場の売上高予測を分野別に見ると,1位はコンテンツ/コミュニケーション/コラボレーション(CCC)で,売上高は前年の21億5500万ドルから25億700万ドルに拡大する見込み。2位は21億6900万ドルの顧客情報管理(CRM),3位は13億7600万ドルの統合基幹業務システム(ERP)。成長速度で見た場合,オフィス・スイートは前年の1億3600万ドルから5億1200万ドルへ,デジタル・コンテンツ作成(DCC)は前年の7000万ドルから1億2600万ドルへ,それぞれ大幅に拡大する見通しだ。

 Mertz氏は,「短期間での導入および投資回収が可能なことや,先行投資が少なくて済むことなど,さまざまな要素がSaaSの普及をけん引している」と述べる。事業継続やバックアップ,アップデート,インフラ管理といった業務の責任を社内のIT部門からベンダーやサービス・プロバイダに委譲できることも,企業によるSaaS導入を後押ししているという。

 しかし,データ・セキュリティやスケーラビリティに関する懸念や,競合会社間の差異が分かりにくいこと,ベンダーの永続性に対する疑問など,SaaS導入を妨げかねない要素もいくつか存在する。Mertz氏は企業に対し,サービス・プロバイダを選定する前に,SaaS導入によって最も大きな効果と利益を得られる分野を見極めることが重要とアドバイスしている。

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