調査内容 2009年度の分野別IT予算額(予測)
調査時期 2009年3月中旬
調査対象 ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者
有効回答 3097件(1204件)
( )内は情報システム担当者の有効回答数


 日経マーケット・アクセスが3月中旬に,ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者を対象に行った調査で,2009年度(2009年4月~2010年3月期)のIT予算額(見込み)を適用業務やITインフラ,ハード/ソフト別などの分野ごとに聞いたところ,「平均の予算額(予算平均額INDEX)」(算出方法は下の「調査概要」参照)が最も大きかったのは,「新規システム開発」の約2690万円。次いで適用業務アプリケーション9分野の中の「SFA・営業系」の約2410万円だった。

 今回の調査から適用業務アプリケーションの対象分野に加えた「特定業種業務(銀行勘定系,自治体徴税,医療情報化など)」も,有効回答数が30未満と少ないため参考値扱いだが,約5850万円と大きな平均予算額を記録した。

3カ月前予測を大きく上回った「会計」「SFA」「物流」

 3カ月前に実施した前回2008年12月調査と比較すると,両調査で共通に提示した20分野の中で,12月調査(予測値)の平均値より今回の3月調査(実績値)の平均値が5%以上大きかったのが10分野,5%以上小さかったのが8分野。ほぼ3カ月前と同じ(5%以内の増減)が,業務アプリの「経営戦略系」「人事・給与」と,システム・インフラの「ストレージ系」,それに「ソフトウエア購入」の4分野だった。

 3カ月前調査の2009年度のIT予算額に対し,今回の平均予算額が上向いた8分野は,目的別の「既存システムの再構築」と「新規システム開発」,「運用・保守開発(信頼性向上やコスト・ダウンのための開発を含む)」の3分野,業務アプリが「会計」「SFA・営業系」「物流」の3分野,インフラが1分野(アプリケーション(システム)間連携基盤系),そして「ハードウエア購入」だった。

 このうち,特に大幅な予算額の上昇率を示したのは,「会計」(2008年12月調査では約770万円→3月調査では約2060万円)の約2.7倍増。次いで「SFA・営業系」(同約1160万円→約2410万円)の約2.1倍,「物流」(同約930万円→約1620万円)の約1.7倍で,業務アプリ系への投資にV字回復の傾向が見られた。

 ただし,同じ業務アプリ系の中でも「CRM・顧客関連」(同約1920万円→約490万円)は,3カ月前調査の平均額に対して約4分の1に低下。「生産管理」(同約1980万円→約1260万円)も約3分の2に落ち込んだ。

3カ月前に比べ「新規開発」「再構築」予算は約25%回復

 目的別の分野として提示した「既存システムの再構築」と「新規システム開発」,「運用・保守開発」の2009年度予算額は,揃って3カ月前調査の平均額に対し大幅に上昇した。上昇率では「運用・保守開発」(2008年12月調査は約960万円→3月調査では約1360万円)の約1.4倍が大きいが,「新規開発」(同約2150万円→約2690万円,25.3%増),「再構築」(同約1810万円→約2240万円,23.7%増)も2割以上の大幅な回復だ。

 2009年度予算額が前回調査より5%以上増加した残り2分野のうち,「アプリケーション(システム)間連携基盤系」は2008年12月調査の約1130万円から,今回の3月調査では約1740万円で54.0%増。「ハードウエア購入」(同約860万円→約1010万円)は18.1%増となっている。

インフラ系予算は半数が2割前後のダウン,「情報共有」は半減

 一方,2009年度予算額が前回2008年12月調査での平均値より5%以上減少した分野は,業務アプリ系ではすでに紹介した「CRM・顧客関連」「生産管理」のほか,「SCM」(2008年12月調査は約2660万円→3月調査では約2230万円)が16.3%減。インフラ系では前回調査と比較可能な7分野のうち,5分野の2009年度予算額が5%以上減で,うち4分野は14%~28%の減少というレンジに固まっている。

 具体的には,「セキュリティー」(同約1390万円→約1000万円)が約28%減,「ネットワーク系(WAN,LAN,電話を含む)」(同約1590万円→約1240万円)が約22%減,「運用・危機対策/ビジネス・コンティニュイティー系」(同約1330万円→約1120万円)が約16%減,「インターネット系(情報発信,電子商取引,マーケティング関連)」(同約1200万円→約1030万円)が約14%減。インフラ系のうち最も大幅な2009年度予算額のダウン率を示したのは「情報系(グループウエアや情報共有)」で,2008年12月調査の約1870万円が,3月調査ではほぼ半額の約950万円となった。

■調査概要
 日経マーケット・アクセスが,ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者のうち,何らかの予算執行・承認権限を持つ人を対象に,執行・承認の権限を持つシステム分野の予算を聞いた。新規購入や開発中の案件がなく,年度のIT関連支出が継続運用費やリース料の支払い,減価償却費のみの場合,それらの総計額が属する範囲を選ぶよう求めた。外注の開発・運用要員の人件費は含めるが,自社内の開発・運用要員の人件費は含めない。
 本文中の「平均の予算額(年度予算平均額INDEX)」は,選択式回答(最も近いものを一つ選択)の「本年度はゼロ」を0,「100万円未満」を50万円,「100万円以上300万円未満」を200万円,「300万円以上1000万円未満」を650万円,「1000万円以上3000万円未満」を2000万円,「3000万円以上5000万円未満」を4000万円,「5000万円以上1億円未満」を7500万円,「1億円以上3億円未満」を2億円,「3億円以上」を4億円に換算して平均した。
 分野別のITインフラ系のうち,「情報系システム」はグループウエアや情報共有システム,「ネットワーク系システム」はWAN,LAN,電話,「インターネット系システム」は情報発信,電子商取引,マーケティング関連のシステムを指すものとして回答を求めた。「運用・危機対策系システム」はビジネス・コンティニュイティー関連のシステムも含む。目的別のうち「運用・保守開発」は信頼性向上やコスト・ダウンのための開発を含む運用・保守,ハード/ソフト別での「ソフトウエア購入」の対象範囲はアプリケーションやミドルウエアを指す,と設問に記載している。
 今回から提示する分野を見直し,業務別,インフラ系,目的別,ハード/ソフト別のそれぞれに置いていた「その他」を廃止。【業務別】に「特定業種業務(銀行勘定系,自治体徴税,医療情報化など)」,【インフラ系】に「エンタープライズ・アーキテクチャー」,【ハード/ソフト別】に「仮想化基盤,OSの購入」の3分野を追加している。
 調査実施時期は2009年3月中旬,調査全体の有効回答は3097件,「所属する企業・組織で自社の情報システムにかかわる業務(企画立案・設計・開発・運用・予算承認など)を担当している」とした実質的な有効回答は1204件。

図●来年度(2009年4月~2010年3月)の分野別IT投資予算額(回答者が予算執行・承認権限を持つ範囲)
図●来年度(2009年4月~2010年3月)の分野別IT投資予算額(回答者が予算執行・承認権限を持つ範囲)