摂南大学は2009年2月19日、2008年度の「電子自治体進展度調査」の結果を公表した。全国1857自治体(都道府県47、市・特別区806、町村1004)を対象に、「庁内情報化」「行政サービス」「情報セキュリティ」の3領域について2008年8月から10月にかけてアンケート調査を実施、880団体(都道府県36、市・特別区403、町村441)から回答を得た。

 調査を実施した摂南大学経営情報学部久保准教授の研究グループでは、回答を基にランキングを算出した。都道府県では1位・岐阜県、2位・佐賀県、3位・兵庫県、市・特別区では、1位・藤沢市(神奈川県)、2位・市川市(千葉県)、3位・厚木市(神奈川県)、町村では1位・小鹿野町(埼玉県)、2位・長沼町(北海道)、3位・二宮町(神奈川県)という結果になった。

 摂南大学経営情報学部の久保貞也准教授は、上位の自治体の特徴について、次のようにコメントしている。

《都道府県》
 岐阜県が3年連続で都道府県のトップとなっており、情報化推進のモデル的役割を果たしている。上位3団体の各領域での順位を見ると岐阜県と佐賀県は庁内情報化、行政サービスの2領域でも上位を占めている。情報セキュリティでは、滋賀県、和歌山県が上位に入っているが、これは情報化の進展段階として、情報セキュリティが向上した後、さらなる庁内情報化と行政サービスの取り組みが高度化していることを示している。行政サービスを高めていくために、庁内横断的な取り組みを可能とする組織とITの効果的な活用が必要と思われる。

《市・特別区》
 藤沢市、市川市、厚木市の上位3団体は毎年上位にランキングされている。庁内情報化、行政サービス、情報セキュリティの各分野での上位3位(9つ)のうち8つまでもがこの3団体で占められており、市・特別区の情報化では東の正横綱と言えるであろう。3市のウェブサイトは市民の目に触れることを十分意識して、利用する市民が情報を探しやすくする工夫や、市と市民がともに力を入れている活動に関する情報提供、市民の声を集める工夫を多く実現している。市・特別区の全体的な傾向として、関東の自治体が上位に多くランクインしていることがいえる(回答団体のうち上位50を占める割合:関東・23.1%、中部・12.8%、中国11.5%)。この原因については分析中であるが、藤沢市、市川市、厚木市らお手本となる団体の存在と、地域内でのいい意味での競争意識があるのではないかと思われる。

町村》
 町村は主産業(工業や農業、観光など)、人口構成比、地理的条件、予算の制約などによって情報化の方向が多様性を増す傾向がある。今年度、1位となった小鹿野町をはじめとして上位にランクインする団体は、住民の声を集めるだけでなく、地域の交流を進める取り組みを行っているところが多い。SNS(ソーシャルネットワークサービス)や地域ポータルサイトをオープンソースの活用によって安価に実現したり、ASPや共同アウトソーシングなどを用いて効率的に提供したりしている。また、住民の声を短期間で反映する対応力も持っており、自治体電子化の効果的な実践例やエッセンスを示している。



■変更履歴
・「今年8月から10月にかけてアンケート調査を実施」としていましたが、正しくは「2008年8月から…」です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2009/02/24]
・領域別ランキングへのリンクを追加しました。[2009/03/23]