今回は中堅・中小企業が導入したサーバーについて,「誰が」「どういった用途」で使っているのか,また「どういった場所」に設置されているのかを見ていこう。
導入部門は情報処理部門が6割以上
サーバーの導入部門は,「情報処理部門」が65.4%で全体の6割以上を占めており,その割合は年々増加する傾向にある(図1)。その背景には,内部統制を強化する目的で,全社視点でのIT統制の取り組みが進んでいることがあるだろう。
一方で「販売・営業部門」「一般管理部門」の割合は減少傾向にあるが,これは必ずしも部門単位のIT投資が減っていることを意味しない。なぜなら,販売・営業部門が活用する営業系アプリケーションへの需要は年々高まっているからだ。また,中堅・中小企業においては,情報システム部門が全社的なIT統制に対応する体制を備えていないケースも多いだろう。ASP(Application Service Provider)SaaS(Software as a Service)やホスティング/ハウジング・サービスなど,社内にサーバーを置かずに,社外のサービスを利用する形態に移行している可能性も十分考えられる。
実際にホスティング・サービス,ASP/SaaSの利用意向では,ホスティング・サービスを「既に利用している」が26.8%,「利用を計画/検討している」まで合わせると39.4%と約4割に達する(図2)。ASPとSaaSはまだ認知度が低いが,SaaSの認知度が今後高まるにつれて,社内にサーバーを設置しないでアプリケーションを利用する形態が増加していくだろう。
サーバーの用途は2007年と比べて大きな変化はあまり見られないが,「セキュリティ,ファイアウォール,バックアップ利用」が4.1ポイント伸ばしている(図3)。この要因として,アクセス権限やクライアント管理などの内部統制対応や,BCP(事業継続計画)に基づく運用,バックアップ体制の見直しなどが考えられる。また,部門別利用の割合が減少していないことから,先に述べたように部門別IT投資は減少していないことが分かる。
サーバー統合が進む一方でオフィス内設置サーバーは今後も存続する
社内におけるサーバーの設置場所は「サーバールーム」が52.4%,次いで「事務所の一部にまとめて設置」が33.5%,「事務所の個々の場所」が11.7%である(図4)。「サーバールーム」が過半数を占めているものの,残りの半数はいまだにサーバールーム以外の事務所に設置されている。
サーバーを事務所内に設置することは,発熱やファンの騒音など弊害が多い。IT統制の観点からも望ましくはない。しかし,サーバールームに設置しない理由は,「サーバールームがない」(57.0%),「サーバー管理部門がない」(7.8%)といった環境や体制の不備による理由が64.8%と大きい(図5)。残りの3割強は,「管理の必要上,管理者の近くに置きたい」(22.7%),「部門サーバー専用のサーバーであるため」(11.7%)と意図して事務所に設置している。こういった場合,仮にサーバールームがあっても,事務所内に設置するケースが多いと予想される。
サーバーの消費電力や騒音が改善されていけば,事務所内にサーバーを設置するケースは今後も残る可能性が高い。これは全社的なIT統制やサーバー統合とは矛盾する動きではある。だが,各ベンダーもこうしたニーズに応えて,省スペース型サーバーや静音ラックサーバー,ラッキングが不要でエンクロージャ単体で設置可能なブレード・サーバーなどを提供している。
次回はサーバーの導入時期,サーバーOSの種類などを取り上げたい。なお,調査プロフィールと今後の連載予定はこちらを参照していただきたい。
ノークリサーチ アナリスト
図4の有効回答数に誤りがありました。お詫びして訂正します。 [2009/1/8 18:58]