サーバー管理負荷の増大は,いまや大企業だけでなく,中堅・中小企業においても大きな課題となっている。今回はこうした中堅・中小企業が抱えるサーバー管理の問題点を,調査結果を基に明らかにしていく。同時にその解決策と期待される「サーバー統合」のニーズ,期待についても分析する。

サーバー管理の課題は日々の運用管理が7割強

 サーバー管理について「課題がある」という回答は74.1%に上っている。課題の具体的な内容は,「バージョンアップ,セキュリティパッチ適用などの運用管理」(73.8%)が最も多く,「機密情報や個人情報などの漏えい対策」(50.6%)がこれに続く(図1)。システム管理者はサーバー,クライアント問わず,OSのバージョン管理やセキュリティパッチの適用,それに付随する動作検証作業などの日常作業に悩まされている。

図1●サーバー管理の課題(Nは有効回答数)
図1●サーバー管理の課題(Nは有効回答数)

 また,これまでは中堅・中小企業の多くが,アプリケーション導入やスタッフ増加などの必要に応じてタワー型サーバーを部門単位に増設し,それぞれの部門や担当者が管理してきた。それがこの数年で,内部統制やセキュリティ対策のために,IT部門が全社的に一括管理するようになった。この結果,IT部門における「運用管理の負荷増大」「設置スペースの削減」の問題が顕在化してきたと考えられる。

 こうしたサーバー管理の課題を解決するものとして,「サーバー統合」に注目が集まっている。中堅・中小企業がサーバー統合に期待する効果を見ると,「バージョンアップ,セキュリティパッチ適応などによる運用工数軽減」(60.5%)が最も高い(図2)。これに「設置スペースの削減」(55.3%),「ハードウエアリソースの有効活用」(44.7%)が続く。サーバー統合には,「運用管理の工数削減」だけでなく,「リソースの効率化」も期待されている。

図2●サーバー統合に期待する効果(Nは有効回答数)
図2●サーバー統合に期待する効果(Nは有効回答数)

サーバー統合のニーズはサーバー導入台数3台以上から

 サーバー統合のニーズは,当然のことながらサーバーの管理台数が増えるとともに高くなる傾向にある(図3)。サーバーを50台以上導入している企業では約半数(48.1%)が,すでに何らかのサーバー統合対策を実施している。興味深いのはサーバーが3台以上5台未満の企業においても「関心がある」「検討中」「導入済」という企業が6割以上(60.5%),5台以上10台未満の企業にいたっては「検討中」「導入済」だけで4割を超えている(41.9%)。

図3●導入台数別のサーバー統合についての考え方と対応方法(Nは有効回答数)
図3●導入台数別のサーバー統合についての考え方と対応方法(Nは有効回答数)

 これらの企業は,サーバー統合によってOSのバージョンアップ,セキュリティパッチの適応など日々の運用管理の負担を軽減すること期待していると推測される。こうした企業のニーズに合わせて,ベンダーもブレードサーバーの枚数が少ないエントリラインアップを充実させている。このため,今後は比較的小規模のサーバー運用環境においても,ブレードを中心としたサーバー統合が進むと予想できる。

 サーバー統合では,企業の情報システム担当者も「サーバー統合」の本来の目的を明確に理解する必要がある。例えば,様々な部門に設置されているタワー型サーバーをラック型サーバーで1カ所に集約するだけでは,設置スペースの削減やハードウエア管理は軽減されるものの,情報システム担当者の運用管理工数の軽減にはつながらない。なぜなら,サーバーが1カ所に集まっただけでは,OSのアップデートやセキュリティのパッチ適応などは「集約前」と同様に1台1台処理しなければならないからである。本当に運用管理の工数を削減したいのなら,タワー型からラック型へといった「物理集約」だけでなく,仮想化ミドルウェアなどを使った「論理集約」が必要となってくる。

 次回は今回述べた「物理集約」と「論理集約」について,さらに詳細に分析したい。なお,調査プロフィールと今後の連載予定はこちらを参照していただきたい。

青木 健太郎(あおき けんたろう)
ノークリサーチ アナリスト
国内大手企業の情報システム部門,Web系のITベンチャ企業を経てノークリサーチに入社。ERPを中心としたアプリケーション市場担当の若手アナリスト。