今回は中堅・中小企業のIT導入意向について分析したい。2008年上期の時点でも,中堅・中小企業のサーバー導入意向は2007年調査よりも「導入予定なし」が増えるという結果になっている(図1)。サーバーの運用・管理工数削減への取り組みやIT統制などを受けて,管理ノードの増加に繋がる新規サーバー導入が敬遠されていることが影響しているのだろう。その後の景気悪化を考えると,現時点では「導入予定なし」はさらに増えていると予想される。

図1●サーバーの導入予定(Nは有効回答数)
図1●サーバーの導入予定(Nは有効回答数)

 すでに2007年の時点で,PCサーバー出荷市場は対前年(2006年)比でほぼ横ばいのゼロ成長である。2008年の調査結果は,中堅・中小企業においても,ある程度サーバー需要の一巡感が見られ,市場成長率は鈍化してきていることと符合する。

 導入目的のトップは「システムの入れ替え」で30.8%,これに「旧OSからのOSのアップグレード」が23.1%,「基幹業務の統合・データの一元化」が21.6%と続く(図2)。上位の導入目的を見ると,「現行システムの問題の改善」「セキュリティの強化」「保守・サポートの期間切れ」「OSのバージョンアップ」など必要に迫られて実施する受動的なものも多い。

図2●サーバー導入の目的,背景
図2●サーバー導入の目的,背景

 必要に迫られてサーバーを導入するもうひとつのケースは,内部統制対応(J-SOX対応)や取引先との関係上必要なシステム導入などの外的要因によるものである。IT統制に関連した目的には「内部統制などの企業コンプライアンス対応」「経営の意思決定に役立つシステム」がある。これらを2007年と比較すると「内部統制などの企業コンプライアンス対応」が4.8ポイント,「経営の意思決定に役立つシステム」が3.9ポイント伸びている。大企業のJ-SOX対応が進むにしたがって,取引関係にある中堅・中小企業に対しても内部統制対応の影響が及んできていることが伺える。

サーバー統合に関連する導入が増えてきた

 基幹システムについては,中堅・中小企業でのERP(統合基幹業務システム)導入による基幹業務の統合,データの一元化や新規システム導入に取り組むケースが多くはなってきているが,まだまだ「大きなリプレース」機運には至っていない。実情を見ると,基幹系アプリケーションの導入率は高いが,現在稼働しているアプリケーションに満足しているために,積極的に新規システムに入れ替える必要性を感じていない企業が多い。当面,この傾向に大きな変化は見られないと予想される。

 興味深いのは,サーバー統合に関連する項目(「省スペース化」「複数あるサーバーの運用・管理コスト改善」)が,導入目的として増えてきたことだ。システム管理者が不足しがちな中堅・中小企業にとって,乱立したサーバーに起因する運用管理コストの増大は切実な問題である。仮想化技術やブレードといったサーバー統合に有効なソリューションが導入可能な価格帯で提供され始めたことも,中堅・中小企業におけるサーバー統合の後押しとなっている。

 今後も増設,新規導入といった物理的なサーバー導入台数の成長は鈍化が予想される。だが,先に述べたようにサーバー統合のニーズは着実に顕在化している。必要に応じてタワー型サーバーを次々と追加導入して,オフィス内に設置する形態から,仮想化技術に代表される「論理集約」とラック型サーバーに代表される「物理集約」,両方の特徴を併せもった仮想化ミドルウエアを搭載したブレードなどを活用したサーバーの統合・集約が,中堅・中小企業においても普及していくだろう。

 さらに2009年にかけては,今年顕在化した「IT統制」や「サーバー統合」に加えて,最新のサーバーOSである「Window Server 2008」へのバージョンアップに合わせたサーバーの入れ替え需要が期待される。

 次回は「サーバー統合がサーバー管理の課題の解決策となり得るのか?」という中堅・中小企業が直面する課題について述べたい。なお,調査プロフィールと今後の連載予定はこちらを参照していただきたい。


青木 健太郎(あおき けんたろう)
ノークリサーチ アナリスト
国内大手企業の情報システム部門,Web系のITベンチャ企業を経てノークリサーチに入社。ERPを中心としたアプリケーション市場担当の若手アナリスト。